将来はなんでもコンピュータで結果予測!?
コンピュータで模擬的に計算
これまで科学の世界で研究と言えば「理論」と「実験」でした。ところが最近は「計算機シミュレーション」という手法が新たに加わり、研究の未来を明るくしています。これは「コンピュータシミュレーション」とも呼ばれ、紙と鉛筆では計算が困難な複雑な事象を、コンピュータで模擬的に計算するというものです。演算速度が30年間で100万倍速くなると言われる半導体技術の進歩は目覚しいものがあります。年を追うごとに計算スピードが速いものが開発されるわけで、コンピュータは今や複雑系の研究には欠かせない存在です。
計算だけで結果を予測
この計算機シミュレーションにおける第1目標は実験の再現です。既存の実験データをもとに計算を行い、同じ結果になるかどうかを確かめます。再現が可能になれば実験を行わなくても計算だけで結果が予測できるわけですが、処理能力がアップした現段階でも、まだまだこの計算には膨大な時間を要します。例えば、タンパク質の折りたたみ構造を解析しようとするとき、少なくとも1秒間程度の時間で起こる現象のシミュレーションを行わないと、どのように折りたたまれているのかはわかりません。しかし汎用コンピュータでは丸1日かけても1億分の1秒間程度なので、1億日という膨大な計算時間が必要です。それでも30年で100万倍速くなったことを考えると、あと30年で1秒間に起こる現象がじゅうぶん追えそうです。たった1秒ではありますが、生命現象が起こる時間スケールとしては多くの場合じゅうぶんな時間なのです。これまでわからなかったことが、どんどん解明できるようになりつつあります。
見えないものも見えるように
このほか、計算機シミュレーションではその結果をコンピュータグラフィックスで画像にすることが可能なため、実験ではあまりに小さくて見ることができなかった原子の運動を、瞬間ごとに把握できるという利点もあります。“机上の空論”が“机上の現実論”になる日もそう遠くはないのかもしれません。
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