木材から「バイオプラスチック」をつくるには
化石資源の代替として注目される植物資源
現在、石油資源の枯渇やマイクロプラスチック、地球温暖化といった環境問題が山積しています。そのため、石油や石炭、天然ガスといった化石資源に代わる資源の開発が急務となっています。
そこで注目されているのが、植物資源です。化石資源は何百万年も昔のCO₂を現代に放出するため、CO₂を大幅に増やします。その点、植物は光合成によって吸収するCO₂と、利用することで排出されるCO₂は同じ量となり、地球に影響を与えない資源なのです。そのため、木材を燃やすバイオマス発電や、穀物などを原料とするバイオエタノールといったエネルギー開発が盛んに行われています。ただ、プラスチックのような素材開発はまだ途上にあるのが現状です。
木材を成分分離して新しい素材をつくる
活用の余地が大いに残されている植物資源は、樹木・竹・稲の茎などの木質です。例えば日本では、木は紙の資源か、木材そのものとしての利用に限られていますが、木質からプラスチックをつくることができれば、大きな環境貢献となるでしょう。
木質からバイオプラスチックをつくるには、2つの方法があります。ひとつは、木質の成分を分離する方法です。木質はセルロース、ヘミセルロース、リグニンを主成分に構成されています。さらに化学的に変換させると、ポリ乳酸やエタノール、樹脂といった成分を取り出せます。これらを使ってバイオプラスチックをつくる技術研究も進んでいます。
「木の粘土」というアイデア
もう一つは、木質を粉状にし、生物系の粘着性のある成分と水を混ぜて「木の粘土」にする手法です。これを押し出したり、型押ししたりして形成すれば、ストローや器、小物など、どんな形にも加工できます。竹やコーヒー豆のカスなども材料として利用できます。プラスチックの代替材料として必要な条件である、加工のしやすさを満たしているといえるでしょう。
100%植物資源の材料は、自然に還ります。地球の未来を見据えた植物資源に期待が集まっているのです。
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先生情報 / 大学情報
三重大学 生物資源学部 資源循環学科 教授 野中 寛 先生
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