分子が引き合う力でつながる「超分子」の性質が超・役に立つ!

分子が引き合う力でつながる「超分子」の性質が超・役に立つ!

「超分子」とは?

高校の化学では、原子同士が電子を共有することで結合する「共有結合」や、たくさんの分子が結合した「高分子」について勉強します。しかし、分子のつながり方には、しっかりと結合しているだけではない、「分子間力」という力で寄り添い合っているだけの場合があります。これを「超分子」と言います。分子同士が一定の距離まで近づくと引き付け合う力が働いてつながりますが、「結合」とは違って簡単に切り離すことができ、元の分子の性質も変わりません。

高分子の中に別の分子を取り込む

超分子関連の分野で注目を集めているのが、「ホスト-ゲスト相互作用」の研究です。
鎖のような構造の高分子と違って、人工合成した王冠型、リング型、杯型など、穴やくぼみのある輪っかのような構造の高分子は、分子間力によって別の分子を取り込み、超分子となります。そうした輪っか状分子を「ホスト」、中に入り込む分子を「ゲスト」と呼びます。
ゲスト分子は、ホスト分子のくぼみに収まるサイズや形でないと取り込まれないため、ぴったり合うゲストをホストは探して取り込みます。この相手を探し出す機能を応用しようという研究は、盛んにおこなわれています。また、ホストになれる高分子の人工合成にも多くの研究者が挑んでいます。ホスト分子の合成は非常に難しいのですが、最近では、日本で合成に成功した柱型の「ピラーアレーン」という新しいホスト分子が、合成の容易さと構造の新しさから世界中の注目を浴びています。

「ホスト-ゲスト」関係は超・役に立つ!

このホスト-ゲスト関係を利用した、役に立つ物質の一つが「シクロデキストリンン」という分子です。これがホスト分子となり、周りの特定の物質をゲスト分子として取り込む性質があるため、臭い分子を閉じ込める消臭剤や、腸内の脂肪を取り込んで体外に排出する食品添加物としてすでに利用されています。
さらに、薬剤をターゲットの臓器まで運ぶカプセルとしてホスト分子を使う研究もあり、医学、薬学への応用も期待されています。

参考資料

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先生情報 / 大学情報

金沢大学 理工学域 物質化学類 助教 角田 貴洋 先生

金沢大学 理工学域 物質化学類 助教 角田 貴洋 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

高分子化学

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メッセージ

化学は身の回りにあふれています。それに気づけるかどうかは、興味をもって周りを見られるかどうかだと思います。そして、興味を持って見るために一番なのは遊ぶことだと思っています。子どもは砂場で遊んでいて「砂って、どうしてさらさらしているのだろう?」といったような興味を持って遊ぶことで、学んでいけるのです。ぜひ、遊びの中で身の回りのものに興味を持つ経験してください。その中で疑問に感じる敏感さは、特に研究者や化学を扱う人にとっての最も大切な力だと考えています。

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金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。