抗体や酵素を低コストで量産! タンパク質生産を効率化する方法
医療や産業に役立つタンパク質の合成
医療界や産業界では、さまざまなタンパク質が使われています。例えば、感染症の検査に使う「抗体」や、物質を分解・合成する「酵素」もタンパク質です。また、「脱石油」をめざして、木材のセルロースからつくるバイオプラスチック技術が研究されていますが、これにはセルロースを分解する酵素などが大量に必要です。このようにタンパク質は、主に動物の生体、大腸菌や酵母など、生きた細胞のタンパク質合成機能が応用されています。しかし、大量につくることが難しくコストがかかるという現状があります。そこで、有用なタンパク質を簡単に大量につくるための研究が行われています。
DNAにペプチドタグをつけて翻訳を促す
細胞内では、DNA情報がRNAに「転写」されたあと、RNAから「翻訳」してタンパク質を合成します。この仕組みを利用した人工的なタンパク質合成の際、翻訳がうまくいかない場合もありました。しかし最近の研究で、DNA鎖の端に特定のペプチドの情報(ペプチドタグ)をつけると、タンパク質への翻訳が効率化されることがわかりました。ペプチドはアミノ酸が複数つながったものです。従来、DNAの外側に手を加える研究がよく行われていた中で、DNA自身にペプチドタグを付けるという画期的な発想により、研究が進んだのです。
つなげるアミノ酸の種類や配列を変えることで、翻訳の効率が変わってくるので、現在は、有用なアミノ酸配列を探索する研究が行われています。またこの方法は、生きた細胞にタンパク質を合成させる方法だけでなく、試験管で行うタンパク質合成にも応用できます。
どんなタンパク質も低コストでつくりたい!
最近はAIによって、有用な機能を持ったタンパク質合成の設計が簡単にできるようになりました。しかし、十分な量が素早く低コストで合成できなければ、医療や産業の世界で使うことはできません。その意味でタンパク質翻訳の効率化技術は、よりよい社会を促進していくものとして期待されています。
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