ゴミ問題解決の糸口となり、生活も豊かにする一石二鳥の研究とは?
捨てられていた農作物が宝の山に
スーパーの食料品売り場にはたくさんの野菜や果物が売られていますが、実はかなりの量の作物が、店頭に並ぶ前に捨てられています。例えばトマトやミカンは、未成熟なうちに2~3割の実を摘果(果実を間引くこと)します。残った実に養分を集中させ、果実を甘く実らせるためです。また、せっかく実っても、規格外のサイズだったり大きな傷が入ったりしている果実の大半は、やはり廃棄されます。ただ、それら廃棄される作物にも、その作物特有の有用成分が含まれているので、捨てるのはもったいない話です。そこで現在、廃棄作物の中から有用成分を抽出する、化学工学分野の研究が進められています。
食べない部分にも有用成分がタップリ!
トマトの有用成分としてはリコピンが有名ですが、動脈硬化予防に効果がある「エスクレオゲニンA」という成分も、豊富に含まれていることが明らかになりました。また、通常は食べずにゴミになる、トマトのヘタや茎、ミカンの皮やトウモロコシの芯などにも、食品や香料、薬品などの原材料となる高付加価値な成分が存在します。それらを効率的に取り出す方法を確立し、活用法を開発すれば、ゴミを大幅に減らせるだけでなく、私たちの生活もより豊かになるでしょう。
化学と産業界をつなぐ化学工学の研究
少ない手間とコストで、目的の成分を取り出す方法として注目されているのが、「超臨界二酸化炭素」や「亜臨界水」を用いる抽出・分離法です。物質が液体や気体に変化する温度や圧力の上限を「臨界点」と呼びますが、それを超える「超臨界」や、その手前の「亜臨界」では、物質が気体・液体の両方の性質を持つようになります。この状態の二酸化炭素や水を使って、物体を分解したり特定成分を抽出したりするのです。
二酸化炭素も水も、温度や圧力を臨界点以下にすれば自然に気化・液化するので、環境負荷もエネルギー消費も少なくて済みます。このように、化学と産業界との「橋渡し」をするのが、化学工学分野の研究なのです。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 材料・応用化学科 准教授 佐々木 満 先生
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