講義No.11363 生物学 化学

海のゴミから生まれる、環境に優しいバイオプラスチック

海のゴミから生まれる、環境に優しいバイオプラスチック

従来のプラスチックが抱える問題点

石油由来のプラスチックは土の中で分解されることがないため、環境汚染の大きな要因となっています。廃棄されたプラスチックはやがて数ミリ以下のマイクロプラスチックとなり、陸や海洋で生物の体内に取り込まれ、その生物を人間が口にすることで健康被害を及ぼすリスクが懸念されています。石油由来のプラスチックが抱えるこれらの問題をすべて解消できると期待されているのが、産業廃棄物を活用したバイオプラスチックです。化学合成で生まれる石油由来のプラスチックは環境への負荷が大きいですが、バイオプラスチックは環境負荷も少なく自然分解されるクリーンなプラスチックです。

廃棄物から生まれるバイオプラスチック

バイオプラスチックの原料は、微生物が合成する「PHA(ポリヒドロキシアルカン酸)」という物質です。これまで見つかっていたPHAを作る微生物は、植物由来の糖や油をエサとしていましたが、三陸海岸のワカメやコンブを用いて培養できる微生物が発見されました。こうして生まれたバイオプラスチックは石油由来のプラスチックと異なり、自然界の微生物のエサにもなり、水と二酸化炭素にまで分解されるので、環境や生物に悪影響を及ぼすことがありません。しかもそのPHAを作る微生物は、これまでわざわざお金を払って処理をしていたワカメやコンブの不要部位で培養できるのです。

バイオプラスチックの課題は製造コスト

石油由来のプラスチックは原価も安く化学合成でスピーディに作れるメリットがあります。その点、バイオプラスチックは微生物細胞の中の化学反応から生み出されるので時間がかかります。また、微生物培養の専用施設も作る必要があり、時間と原料コストがかさみます。しかし、技術の進歩によりプラスチック作りに特化した微生物を生み出すことができるようになり、製造コストも当初と比べて10分の1ほどに減らすことに成功しています。今後、さらに技術が進歩すれば化学合成に頼らない自然由来のプラスチックが製品化される日が来ることが期待されています。

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岩手大学 農学部 応用生物化学科(令和7年度から農学部 生命科学科 分子生物機能学コース所属) 教授 山田 美和 先生

岩手大学 農学部 応用生物化学科(令和7年度から農学部 生命科学科 分子生物機能学コース所属) 教授 山田 美和 先生

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微生物学

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メッセージ

まずは自分の興味があること、続けていて楽しいことを探してください。研究の世界は、結果が出るまで何カ月もひたすら同じ作業を繰り返す地道な作業が求められます。
微生物の研究は、人間の時間よりも微生物の生態を優先させて行動する必要があるので、朝も夜も関係なく動けるだけの体力が求められます。微生物も動物と同じで、手なずけることが重要です。研究はなかなか結果が出なくても諦めない、宝探しのときのような根気も必要でしょう。それだけに、結果につながったときの喜びはひとしおです。

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