作業療法士が携わる復職前の「リワークプログラム」
職場復帰をめざす人の心に寄り添う
うつ病は世界的に増加傾向にあり、その経済的損失は大きなものです。再発率も高く、回復して職場に戻ってもストレスで再び発症し、退職する人も多いのが現状です。その対応策として、本格的な復職の前に、仕事ができるように患者さんの体と心を立て直していく「リワークプログラム」が導入されはじめています。
そのリワークプログラムに、作業療法士が携わる研究が進められています。作業療法士は、リハビリにおける精神的な側面からのアプローチとして、患者さんの能力や行動、物事のとらえ方からその人の価値観を探り、その人の特性や全体象を理解しながら回復の糸口を見つけ出します。そうした面が、リワークプログラムでも生かされると考えられるからです。
行動や思考の偏りを整える
「できる」と、「できるけれど大変」は、結果は同じでも過程に大きな差があります。大変さを抱えたままでは疲労の蓄積が大きく、うつ病の再発へとつながりやすくなります。リワークプログラムでは、作業療法士は患者さんと一緒に仕事に近い内容のワークに取り組みます。その人の行動の偏りや、自分を責めすぎてしまうなどの思考の偏りを指摘し、その人に合った方法を相談しながら現実に即した支援を行うのです。また、嫌なことがあった時に適切な気分転換の方法を持ってもらうことで、具合が悪くなるサイクルを減らし、プラスの循環を生み出します。作業療法士が関わったリワークプログラムを経た患者さんの2年間の予後を調査したところ、それまでのプログラムと比べて復職の継続率が高い傾向が見えてきています。
職場環境の「ユニバーサルデザイン」
うつ病から回復してきた人が働きやすくストレスをため込まない職場環境は、健常な人にとっても働きやすい、「ユニバーサルデザイン」がなされた職場だといえます。患者さんの回復だけでなく、すべての人が働きやすい環境を実現するために、リワークプログラムから得た知見を生かした職場の環境づくりが企業との協働で進められています。
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先生情報 / 大学情報
信州大学 医学部 保健学科 作業療法学専攻 助教 田中 佐千恵 先生
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