関節の「小さな動き」が人生のQOLに作用する
可動域がごく少ない関節の動きを研究する
人体の関節や骨、筋肉がどのような動きや役割をしているのかについては、すでにあらゆるデータが蓄積されていると思うかもしれません。しかし、人体には未知の部分がまだまだ残されています。その一つは、喉にあります。7個からなる頸椎(けいつい)の関節は、食べ物を飲み込む時、どのように動くでしょうか。物を飲み込む時の頸椎のわずかな動きは、付随する複雑な筋肉の動きや神経からすると、ごくわずかな動きです。1~2°しか動かない分、腕を上げるといった180°もの大きな動きに比べると、損傷した場合の影響も非常に大きくなります。
技術の進歩と横の連携で可能に
こうした研究は、検査する機材の進歩と共に前進します。またそれだけでなく、分野をまたいだ研究者と研究者の連携が鍵となります。喉をX線透視装置で動画撮影する際に、例えば7個の頸椎それぞれの動きを解析して輪郭をマーキングできるコンピュータプログラムが入っていれば、手術前などの診断にも役立ちます。さらに、検査結果の待ち時間が短縮されます。また、例えばAの骨とBの骨を手術で固定すると、飲み込む動作(嚥下運動)に支障があるといったこともわかるでしょう。そうなっては、外科手術が成功しても、患者のQOLが下がるのは言うまでもありません。広く深い理解を可能にするには、少なくとも医師と作業療法士や理学療法士、放射線技師、コンピュータプログラムを組める工学の研究者が連携する必要があります。医工連携と呼ばれる分野横断のつながりです。
他の部位の手術やリハビリに応用も
人体の小さな関節や筋肉の収縮が客観的なデータとして蓄積されていくと、他の関節でも応用できることから、身体全体にとって重要だと考えられます。例えば、手首や足首のようにたくさんの細かい骨からなる関節は、手術の難易度が高いとされています。さらに脊柱側弯症の改善などにも研究成果の応用が期待されます。頸椎のように「動きの小さなものの解析」が、これからの時代には重要になっていくのです。
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先生情報 / 大学情報
四條畷学園大学 リハビリテーション学部 作業療法学専攻 教授 目片 幸二郎 先生
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