講義No.12632 医療技術

関節の「小さな動き」が人生のQOLに作用する

関節の「小さな動き」が人生のQOLに作用する

可動域がごく少ない関節の動きを研究する

人体の関節や骨、筋肉がどのような動きや役割をしているのかについては、すでにあらゆるデータが蓄積されていると思うかもしれません。しかし、人体には未知の部分がまだまだ残されています。その一つは、喉にあります。7個からなる頸椎(けいつい)の関節は、食べ物を飲み込む時、どのように動くでしょうか。物を飲み込む時の頸椎のわずかな動きは、付随する複雑な筋肉の動きや神経からすると、ごくわずかな動きです。1~2°しか動かない分、腕を上げるといった180°もの大きな動きに比べると、損傷した場合の影響も非常に大きくなります。

技術の進歩と横の連携で可能に

こうした研究は、検査する機材の進歩と共に前進します。またそれだけでなく、分野をまたいだ研究者と研究者の連携が鍵となります。喉をX線透視装置で動画撮影する際に、例えば7個の頸椎それぞれの動きを解析して輪郭をマーキングできるコンピュータプログラムが入っていれば、手術前などの診断にも役立ちます。さらに、検査結果の待ち時間が短縮されます。また、例えばAの骨とBの骨を手術で固定すると、飲み込む動作(嚥下運動)に支障があるといったこともわかるでしょう。そうなっては、外科手術が成功しても、患者のQOLが下がるのは言うまでもありません。広く深い理解を可能にするには、少なくとも医師と作業療法士や理学療法士、放射線技師、コンピュータプログラムを組める工学の研究者が連携する必要があります。医工連携と呼ばれる分野横断のつながりです。

他の部位の手術やリハビリに応用も

人体の小さな関節や筋肉の収縮が客観的なデータとして蓄積されていくと、他の関節でも応用できることから、身体全体にとって重要だと考えられます。例えば、手首や足首のようにたくさんの細かい骨からなる関節は、手術の難易度が高いとされています。さらに脊柱側弯症の改善などにも研究成果の応用が期待されます。頸椎のように「動きの小さなものの解析」が、これからの時代には重要になっていくのです。

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先生情報 / 大学情報

四條畷学園大学 リハビリテーション学部 作業療法学専攻 教授 目片 幸二郎 先生

四條畷学園大学 リハビリテーション学部 作業療法学専攻 教授 目片 幸二郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

運動学、関節運動学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は高校時代、自分の幸福を最大にするための戦略を立て、能力に応じて幸せになれる方法を考えて作業療法の進路を選びました。医工連携といいますが、学問的な歴史でいえば日本での作業療法は法整備が行われて50年そこそこで、これからの学問といえます。近年の検査機器の進歩やAIの導入などにより、医学と関連する分野でも新しい発想の研究が進んでいます。医工連携は、学問的好奇心があって成果を出したい人、誰かのために役に立ちたいという展望を持つ人には、比較的かなえやすい分野です。あなたもぜひチャレンジしてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

四條畷学園大学に関心を持ったあなたは

医療技術者(理学療法士・作業療法士・看護師)を養成する大学です。リハビリテーション学部は、学生にとって魅力あるカリキュラム編成と100を超える実習施設が整っており、国家試験合格実績も着実に伸ばしています。また、小規模だからこそ実現できる教員・学生間の親密さが国家試験合格までの懇切丁寧な指導につながっています。看護学部は、取得資格を看護師一本に特化したことによりカリキュラムを充実させました。講義・演習→実習という学修サイクルを形成し、より深い理解につなげ、実践力のある看護師の育成をめざします。