観察を通じて患者さんの気持ちを知るツールの開発
気持ちを言葉で表現できない患者さんと向きあう
認知症や高次脳機能障害の患者さんは、記憶や現実認識の問題で自分の気持ちや状態をうまく表現できないことがあります。そのため、支援者はゆっくりと相手の様子を観察しながら「今はこれが欲しいんだな」「これが楽しいんだな」とその都度判断して支援を行います。しかし、その判断基準が曖昧なままだと、その後の支援や回復につなげていくことができず、結果的に支援者は無力感を感じ自身のバーンアウト(燃え尽き)にもつながってしまいます。そこで、第三者目線から患者さん本人は楽しんでいるのか、本人から見てその行為は意味があるのかを分析し、活動への能動性をわかりやすく数値化する枠組みの開発が求められています。
「能動的な態度」を観察する評価法
活動の質「能動的態度」の評価法には、21種類の観察項目があります。例えば「活動を開始する」の場合は、レクリエーションを始めるにあたって「始まる前から椅子を並べて待っている」という能動的な状態を4点、「いやいや人に連れられてやっている」消極的な状態を1点として、4段階で点数をつけていきます。これは活動が上手くできるかなどの能力ではなく、その人の心の能動性や興味・関心の態度を見るものです。支援者側がこうした観察から患者さんの能動性を導くコツを知ることで、患者さんとの交流スキルに向上がみられました。
すべての対人関係の助けになるツール
この評価法を取り入れることで患者さんの能動性を客観的に評価できるようになり、支援者側にも「迷うことがなく、患者さんに寄り添った支援方法を選びやすくなった」という声が上がっています。今は高齢者支援を中心とした指標が開発されていますが、今後は子育てや幼児教育など、保護者が子どもを見守る際に使える指標の開発にも応用できるでしょう。
人には得意・不得意、向き・不向きの要素があります。そうしたことを改めて見直すためにこの評価法が使われれば、お互いがより良い状態で交流し、多くの人が幸せに生活する助けになります。
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神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 作業療法学科 准教授 小川 真寛 先生
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