脳機能の改善をめざして、脳神経科学から考えるリハビリ

脳機能の改善をめざして、脳神経科学から考えるリハビリ

脳機能からアプローチするリハビリ

作業療法士は、体だけでなく、脳に障害のある人にもリハビリを行ないます。心の病気や認知症なども、脳の機能異常が要因となっています。その人の体の活動に加えて、脳機能にも焦点を当てたリハビリが重要です。
今は、MRIなどの機器によって脳の状態を調べることができます。その情報を基に脳の機能改善をめざしつつ、その人の能力を最大限に生かせる効果的なリハビリ方法が模索されています。

脳のしくみを考える神経科学

脳は、複雑ですが効率よく活動しています。ケガなどで脳の一部が機能しなくなると、脳全体でそれを補おうとしてネットワークが変わります。また、脳は非常に省エネで、必要な部分に集中して活動しています。会話する時は、相手が言った情報を記憶し、自身の記憶を辿りながら最適な答えをアウトプットする、ということをしています。
脳機能に障害があると、記憶できる時間や量が減る、料理などの作業が効率よくできない、怒りなどの感情を抑えられない、といったことが起こります。このように、人の動作や感情表現さえも脳に影響されるため、リハビリには脳神経科学が欠かせないと考えられるのです。

脳の加齢を緩やかにすることも可能に

日常生活の過ごし方次第で、脳の加齢スピードを緩やかにできます。勉強に例えるなら、答えを丸暗記してアウトプットするよりも、試行錯誤しながら答えを導き出すほうが脳機能の維持に効果的です。時々休憩をすると、脳に取り入れた情報を整理する時間を与えられます。
脳神経科学を用いた手法で、より感度の高い脳の認知機能テストを検証しています。健康診断のように、気軽に認知テストができれば、早い時期からアドバイスできるようになります。50代や60代から実施すると、認知症予防により効果的です。この手法が確立すれば、高齢者の健康寿命を伸ばすことに貢献できるはずです。

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先生情報 / 大学情報

関西医科大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 助教 山下 円香 先生

関西医科大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 助教 山下 円香 先生

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リハビリテーション学、神経科学

メッセージ

病気やケガで日常生活に支障がある人の支援をする作業療法士は、脳の機能も扱います。日常のなかで何をどう感じて、何を選択してどう行動するかといったことすべてに、脳が関わっています。「自分はこうだ」と思っている自分も、脳がそうさせています。脳の研究は、人間を知る楽しさにあふれています。リハビリ学と神経科学を融合した研究は今後も発展が期待されています。これが実現できれば、より最適なリハビリや認知症予防などに有効な手段となります。一緒に、脳機能からのリハビリを考えていきましょう。

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関西医科大学は大阪府枚方市に位置し、医学部・看護学部・リハビリテーション学部(理学療法学科、作業療法学科)を有する医療系複合大学です。急性期医療から在宅医療まで揃う附属医療機関を擁する強みを活かし、医療現場の実情に即したチーム医療を学修。3学部合同授業を通して各職種の役割を尊重・理解することで幅広い視野をもつ学生を育成します。
学内には最新の医療現場に対応した演習設備や機器も充実。臨床現場の実践に近い環境下で繰り返し演習することで、確かな技術はもちろん、状況に応じた判断力・対応力を養います。