資源や環境問題の解決に向けて 高温超伝導体の活用

資源や環境問題の解決に向けて 高温超伝導体の活用

低温超伝導体から高温超伝導体へ

「超伝導」は、電気抵抗がゼロになる現象です。大電流を流すことができ、超伝導体を巻いたコイルは強力な磁場を発生できます。超伝導リニアモーターカーや、医療機器のMRI(磁気共鳴画像装置)が代表的な応用例です。超伝導現象を発生させるには、物質をある温度まで冷却することが必要です。その温度は物質によって異なり、25ケルビン(K)を境に、高温超伝導体と低温超伝導体に分類されます。現在実用化されているのは主に低温超伝導体ですが、その冷却には液体ヘリウムが必須です。ヘリウムは希少な資源なため、供給が不足しており、枯渇も懸念されています。一方、高温超伝導体は液体窒素で冷却できます。窒素は空気中に大量に存在し、安価に入手できるので、高温超伝導体を活用するための研究が進んでいます。

ヘリウム不要なMRIの実現に向けて

1台のMRIには、1,000リットルもの液体ヘリウムが使われることから、高温超伝導磁石への置き換えが急務です。しかし、高温超伝導線材は幅のあるテープ状をしているため、超伝導固有の現象である遮蔽(しゃへい)電流がMRIに必要とされる空間均一度を低下させてしまうという問題が生じます。この問題を解決するために、補助的に交流磁界を加えることで遮蔽電流をなくす方法が研究され、小型の装置実験で実証されました。今後、大型装置での実証を経て、実用化に向かいます。

「水素+高温超伝導体」を活用する

近年、カーボンニュートラルなエネルギー源として、水素が期待されています。液体水素の温度は20Kなので、高温超伝導体の冷却に利用できます。病院の非常用燃料として水素が使われる未来を考えると、液体水素冷却のMRIは非常に有望です。その他にも、水素と高温超伝導体の組み合わせはさまざまなところでの活用が期待できます。その基礎づくりとして、別容器へ簡便に移送する高温超伝導ポンプの実証実験が成功しており、液体水素の量を測るための超伝導液面計も実用化されています。

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山陽小野田市立山口東京理科大学 工学部 電気工学科 教授 柁川 一弘 先生

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超伝導工学、電気工学

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メッセージ

集中して勉学や仕事をするためには、それに耐えられる体力が必要です。高校時代は、勉強だけではなく、身体も鍛えましょう。そして、本をたくさん読んでください。たくさん読むことで語彙(ごい)力や表現力はもちろん、書いてある内容を素早く理解できる速読力も身につきます。また、さまざまな問題の解決をものづくりで模索する、工学の魅力に気づいてほしいと思います。大学で工学を学ぶことは、卒業後に幅広い分野で活躍するための土台づくりになります。ぜひ工学部への進学を検討してください。

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山陽小野田市立山口東京理科大学は「確かな基礎教育」を掲げ、基礎学力を育成する体系的な教育を行っています。2016年4月、公立大学法人へと移行、2018年4月西日本初の公立の薬学部を設置し、工学部・薬学部の二学部体制となりました。東京理科大学の姉妹校として、基礎学力を重視した実力主義の教育を受け継ぎ、工学・薬学の専門的な学術を教育・研究するとともに、地域産業界・医療界で活躍する人材を育成します!