さまざまな生活の場に「磁力」を活用する技術開発

さまざまな生活の場に「磁力」を活用する技術開発

掲示用磁石の秘密

黒板などに紙を貼るときに使う磁石は均一に見えますが、実はS極とN極を交互に組み合わせて作られています。その証拠に、磁石を2つ合わせて横に動かしてみると、相互の極がひきつけあったり反発したりするためにカタカタと振動を感じます。メモを貼るような至近距離では、どちらかの極だけよりも交互に組み合わせた方がくっつく力が強くなるという性質を利用しているのです。

磁力による対流

鍋に水を入れて火にかけると対流が起こります。これは、温められた水が膨張し、比重が軽くなって上昇し、重力で比重の大きな冷たい水が下降するためです。磁力も重力のように遠隔で作用するので、磁石に吸引する流体を対流させることもできます。鍋に熱源と磁石を当てると、温まった流体は磁化が弱まるために磁石から離れ、冷えている流体が磁力に引き寄せられて対流が起きます。重力によって対流を起こす場合は熱源が下にある必要がありますが、磁石の場合は熱源の位置を特定する必要がなく、無重力でも対流を起こすことが可能です。これを応用すると無重力下でろうそくの炎を燃やし続けることができます。無重力下では、ろうそくの炎は丸くなってすぐ消えてしまいますが、強い磁場をかけると磁性をもつ酸素が引き寄せられ、温まった二酸化炭素は離れていくため対流が起き、炎を燃え続けさせることができるのです。

接触せずにはたらく力

人間のスケールにおいて、接触せずにはたらく力は重力と静電気力と磁力しかありません。重力は、人間がその向きや大きさを変えることは不可能です。また、静電気力は非常に弱いので大きなものを動かすことができません。一方で、磁力は人間が利用できる大きな遠隔の力です。電磁力を使ったモーターは電車や車などに搭載されており、超伝導の磁気浮上を利用した電力貯蔵器の開発や、超伝導の電磁力でプラズマを閉じ込める安全でクリーンな核融合発電も研究されています。磁力の利用は人類にとって欠かせない技術となるでしょう。

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秋田県立大学 システム科学技術学部 機械工学科 助教 二村 宗男 先生

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メッセージ

理工系の学問では、人類の最先端の技術や研究に触れることができ、世の中の誰も知らない知識を自分で開拓することができます。「こんなことがあったのか」という、自分の未知の領域へ足を踏み入れ、それを越えることができるのです。
一つの領域に踏み入るたびに学ばなければいけないことは増えますが、それが土台となり、さらに先の領域へ足を踏み出すことができます。新しいことを学べるというのはとても幸せなことです。そのワクワクする体験を、ぜひ一緒にしていきましょう。

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秋田県立大学は、最先端の設備と全国トップクラスの少人数教育体制など、入学から卒業まで着実に成長できる環境が整っています。中でも「学生自主研究制度」は、入学後すぐに研究に取り組める制度です。学生が主役のこの制度は、自ら研究テーマを決定し、指導教員がアドバイスを行い、実験スペースや機材、そして研究資金を交付して学生をバックアップします。秋田県立大学は、新しい知識を得ながら、知的好奇心を満たす無限のフィールド、学生が主役になれる大学です。