薬剤師の専門性を向上させ職域を広げる、業務の「見える化」
薬剤師の仕事の重心は「物から人へ」
薬剤師の仕事には、処方箋に従って薬をそろえたり調剤したりする「対物」の業務と、薬に関する説明や服薬指導、服薬中のフォローアップといった「対人」の業務があります。近年は、対人業務の重要性が認識され、厚生労働省も「物から人へ」の方針を打ち出しました。ここで問題となるのは、対人業務は、仕事の内容や意味が見えづらく、質の評価も難しいことです。そこで、業務を「見える化」する研究が始まっています。例えば、ぜんそく患者に対して吸引器の使い方の説明とフォローアップを丁寧に行うか否かで、患者の病気の治りが違うという研究結果が出ています。
地域の包括ケアシステムの調整役
フォローアップが重要な病気の一つが「がん」です。近年のがん治療では、抗がん剤治療で数週間に1回病院に行き、その間は自宅療養や仕事というケースが多くあります。病院に行かない期間に、薬剤師が患者に電話などで副作用の状況を聴取し、必要に応じて病院に伝えます。これが、医師が処方を検討するための重要な情報になります。また、ヘルパーなどの他の職種と連携して、地域の包括ケアシステムの要となることも期待されています。連携方法を考える上でも、薬剤師の仕事の「見える化」が役立ちます。
地域連携薬局と専門医療機関連携薬局
このような役割を果たせる薬局をそれぞれ、入退院時や在宅医療への対応時に他医療提供施設と連携して対応できる薬局を「地域連携薬局」、がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局を「専門医療機関連携薬局」と称します。地域連携薬局は、日常生活圏域(中学校区)ごとに1薬局以上、専門医療機関連携薬局は、二次医療圏ごとに1薬局以上の認定薬局を設置できるよう、求められています。
がん以外にも、フォローアップが重要な病気は複数あります。薬剤師の仕事を「見える化」して専門性を必要とする業務を明らかにすることは、専門薬剤師の育成・評価の土台であり、薬剤師の地位の向上にもつながります。
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