多彩な技術とアイデアで実現される、鉄道の電力消費量削減策とは?

多彩な技術とアイデアで実現される、鉄道の電力消費量削減策とは?

電車はたくさんの電力を消費する?

電車の運行には、電力が欠かせません。あれだけ巨大な車両ですが、もともと鉄道は金属のレールの上を金属の車輪で走るため走行抵抗が少なく、エネルギー効率の高い乗り物です。さらに最近の電車は、以前よりも3、4割も電力消費を抑えることに成功しています。こうした電力消費の抑制には、実にさまざまな技術が投入されています。
まず挙げられるのが、電車の車両自体の改良です。車体にアルミなどを用いることで大幅な軽量化を図り、より高効率で作動するモータやインバータも導入されています。また、最近の電車には、回生ブレーキと呼ばれるブレーキが搭載されています。これは、モータを発電機として動作させることで生じる抵抗力をブレーキとして利用するもので、そこで発生する電気は架線に戻したり蓄電したりします。今ではほとんどの電車で使用されています。

運行の仕方を改善して節電する

車両の改良だけでなく、運行の仕方をより効率的にすることで消費する電力を抑えるという方法も研究されています。例えば、加速する際は最大限の能力を使って行い、めざす速度に達したら惰性を有効に使って走り、減速する際は機械ブレーキを使わず回生ブレーキだけで止めるようにブレーキ力を制限して運転すると、無駄な電力消費を抑えることができます。一方、鉄道の運行区間には、カーブや坂などさまざまな条件の場所があり、安全のための制限速度が設定されている区間もあります。こうした要素も踏まえ、駅から駅までの間を、どの程度まで加速し、どのタイミングでブレーキをかけるべきか、細かく検討していけば、さらなる電力削減を図ることが可能になります。

さらなる20%減をめざすために

国土交通省が示した目標によると、2030年までに、日本の鉄道ではさらに20%の電力消費量の削減が求められています。この目標を達成するためには、車両のさらなる改良のほか、理想的な省エネルギー運転を支援するシステムの導入などによる、より効率的な運行の実現が必要になるのです。

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上智大学 理工学部 機能創造理工学科 教授 宮武 昌史 先生

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高校までの勉強と、大学の学問とは異なります。それまでとは違って、大学ではまるで別次元のような、思いもしないような学問に出会えます。なにしろ、高校まではすでに発見され体系化された内容を学ぶのに対し、大学は教科書どころか、これから世界に発表される最先端の研究がされている場所です。大学教員は、最先端分野の研究者です。その研究者たちが、あなたを学問の最先端に引き込もうとしています。ぜひ大学で、面白いと思える学問を見つけて引き込まれてほしいと思います。

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日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。