転移や再発を防げ! 「がん幹細胞」の仕組みの研究
がんの組織にもある「幹細胞」
生物の組織には、「幹細胞」という、受精卵から体がつくられる発生過程やいろいろな組織を維持するために必要な新しい細胞をつくり出す細胞があります。例えば、「神経幹細胞」からは神経系を構成する多種類の細胞がつくられます。また、iPS細胞は人工多能性幹細胞と呼ばれる細胞で、体を構成する全ての細胞をつくることができるため、再生医療への応用が期待される細胞です。
そして実は、がんの組織にも、正常組織の幹細胞に似た「がん幹細胞」があります。この細胞はがんの発生や成長に必要な細胞を供給し、がんの転移や再発に深く関わっていることが分かっています。
がんの転移、再発が起こるわけ
現在の多くの抗がん剤は、多くのがん細胞に対して効果はありますが、がん幹細胞には効きにくいことが分かっています。そのため、生き残ったがん幹細胞が新たながん組織をつくり、再発が起こります。また、このがん幹細胞が移動して他の組織に転移すると、がんの転移の原因となります。
そこで、がん幹細胞を標的とした薬剤の開発をめざして、がん幹細胞の性質に関するさまざまな研究が行われています。その中には、「がん幹細胞の増殖メカニズムの解明」の研究があります。がん幹細胞がどのように増殖するかを知ることで、逆に増殖を抑えるにはどうしたらいいかがわかります。この研究は、ノウゼンカズラ科の植物に含まれるがん細胞の増殖を抑える物質を調べる過程で見つかりました。
がん幹細胞の増殖を促進する物質の可能性
現在は、この物質を精製してがん幹細胞に与え、がん幹細胞が増殖するメカニズムを調べています。それがわかれば、がん幹細胞の増殖を抑制する方法の開発に大きく貢献でき、将来、がんの転移や再発を防ぐ薬が開発できると期待されます。
さらに、この成分ががん幹細胞の増殖を促進するのであれば、正常な幹細胞の増殖を促進する可能性もあります。この物質により正常幹細胞の増殖を促進できれば、再生医療にも役立つかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
山陽小野田市立山口東京理科大学 工学部 応用化学科 准教授 岩館 寛大 先生
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