車の振動で発電! 磁気を利用したエナジーハーベスティングの方法
磁気を使えば発電できる
磁石がくっついたり反発したり、金属を吸い寄せたりと、「磁気」は不思議な力です。その力は、人間の暮らしを豊かにすることに使われてきました。磁石が反発・吸引する力を使った「磁気浮上」は、今、話題になっているリニアモーターカーの原理です。また、発電所では、コイルの中で磁石を動かすと電流が流れる「電磁誘導」の原理で発電しています。
この原理を「エナジーハーベスティング(環境発電)」に利用しようという研究が行われています。エナジーハーベスティングとは、これまで捨てられていたエネルギーを無駄なく利用しようという考え方です。
振動エネルギーを電気に変える
自動車が走る時は、路面の凹凸によって必ず振動が生まれます。この振動する力もエネルギーです。通常は乗り心地を良くするために、サスペンションというバネやダンパーを組み合わせた機構で走行中の振動を吸収しています。その時、振動エネルギーは熱に変わって放出されています。その捨てられている振動エネルギーでコイルの中にある磁石を動かせば、電磁誘導の原理で電力に変えることができます。
そこで、電気自動車の4輪それぞれにコイルと磁石を取り付けて発電し、電気自動車の航続距離(1回の充電で走れる距離)を伸ばそうという研究が行われています。サーキットで車を走らせた時のタイヤの振動の解析を行ったところ、理論上、走行中に電球をともす程度の発電ができることがわかりました。今後は発電量をもっと増やせるように、コイルの巻き数や磁石の種類など、より効率よく磁石を動かす仕組みが研究されていきます。
カーボンニュートラルをめざして
こうした研究の背景には、カーボンニュートラル、つまり二酸化炭素の排出量と吸収量を同じにして、地球温暖化問題を解決しようという社会全体の目標があります。移動手段としてなくてはならない自動車からの二酸化炭素を減らすために電気自動車が注目されていますが、その普及のためには、航続距離を伸ばすことが重要な課題なのです。
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