盗聴がバレバレ、未来の通信を支える「量子暗号」の仕組み
未来の通信に期待される「量子暗号」
毎日使っているインターネットには、「暗号」が使われています。盗聴によって個人情報も簡単に漏れてしまうからです。今の通信では、情報を暗号化して送信し、元に戻すための「暗号鍵」を送・受信者間で共有します。盗聴してこの鍵を使おうとすると、「数百桁の整数の素因数分解」を解かなくてはなりません。その計算はスーパーコンピュータでも膨大な時間がかかるため、事実上、安全です。
しかし今後、量子コンピュータなどで計算速度が上がれば、こうした暗号も解読されるときがきます。そこで「絶対に解読できない暗号」として期待されているのが「量子暗号」です。
光子の偏光状態で1/0の情報を送る
「量子」とは、波の性質を併せ持ったミクロの粒子です。現在、主に研究されている量子暗号は、量子の一種である「光子」に暗号鍵の情報をのせて光ファイバーで送る方式です。電磁波である光には振動方向(偏光)があります。
今の通信では、電気信号のON/OFFで1/0を表しますが、量子暗号では光子1個ごとの偏光が「水平か垂直か」、または「45度か135度か」でそれぞれ0/1を表現し、この2種類の組をランダムに使って送信します。組によって光子の検出器が異なるので、間違って使うと受信者が検出する光子の偏光が変わるという性質があります。量子暗号はこの性質を利用しています。
必ず盗聴が発見できる原理
量子は複製できないという性質もあるため、盗聴するには通信途中で量子を取り出して検出します。一度検出した量子を通信経路に戻したとしても、間違った検出器では偏光が変化した光子を戻すことになり、受信者の検出結果に誤りが発生します。そこで、送信後に送・受信者で照合を行い、データに欠けや誤りがあれば盗聴されたとわかり対策が取れます。量子の性質によって、原理的に通信の安全が保証されるのです。
現実的には盗聴者がいなくても送信時に誤りが発生することがあるため、「誤り訂正」の技術も量子暗号の重要な研究対象になっています。
参考資料
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玉川大学 工学部 ソフトウェアサイエンス学科 教授 山﨑 浩一 先生
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