機械を使って患者の命を守る「生体機能代行技術」

患者の命を守る機械
人の生命を維持するために、医療現場ではさまざまな機械が使われています。心臓手術中に使う人工心肺や、新型コロナウイルスの流行時に活躍した生命維持装置「エクモ」などが有名です。ほかにも自力で呼吸ができなくなったときに、肺の働きを補うための人工呼吸器があります。酸素を含むガスを体内に送り込んで肺を膨らませ、不要になった二酸化炭素の排出と、全身への酸素の供給を手助けする装置です。
このように、肺や心臓など体内の循環を担う器官の機能を機械で補うための分野を「生体機能代行技術学」といいます。ガスを送る量や肺にかける圧力など、機械の調整を一つでも誤ると患者の生命が失われる可能性があるため、安全性や操作技術の向上が不可欠です。
体に与える負担を探る
人工呼吸器の操作を担当する臨床工学技士には、患者一人一人の状態に適した運転管理が求められます。特に細かな調整が必要なケースを把握するために、うまく呼吸ができない患者の病態分析が行われました。実験ではさまざまな症状の人の呼吸器を模した装置を用意して、人工呼吸器でガスを送り込んだとき患者にかかる負担を調べます。負担の大きさは、肺にかかる圧力と、送り込むガスの量を示したグラフを見れば判断可能です。正常な運転をしているときは、円のような形のグラフが表示されます。しかし圧力が強すぎるときや大量のガスを送り込んでしまうと、円の一部がとがっていびつな形になります。
負担がかかりやすい人の特徴は?
実験の結果、ぜんそくなどの症状で気道が細くなっている患者や、肺が硬くなり膨らみにくくなる病気にかかっている患者は特に呼吸が困難で、グラフもいびつな形になりやすいことがわかりました。高い圧力を掛けないと、肺を動かすために必要な量のガスが体内に入っていかないからです。しかし圧力が強すぎると肺を傷つけてしまう危険性が高まります。ガスの量や圧力をどう調整すれば体への負担が少なくなるのか、安全な呼吸補助の方法を見いだすための研究が続いています。
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群馬医療福祉大学医療技術学部 医療技術学科 臨床工学専攻 准教授立原 敬一 先生
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