ガラスが生み出す次世代の通信環境
便利な光ファイバー通信の裏にある課題
今や身近なものとなった光ファイバー通信ですが、そこでは通常のガラスよりも不純物が極めて少ない「シリカガラス」がコア部材として有効活用されています。しかしそこに、課題がないわけではありません。
現在の光ファイバーは、その中を光が15km進むと損失によって強さが半分になってしまいます。そのため、例えば太平洋を横断する約1万kmの距離で情報通信する場合、途中にいくつもの中継器を設置し、光の強さを増幅して何とか1万km先まで情報を届けるという方法がとられています。
逆転の発想が技術を大きく進展
しかし昨今の研究により、光ファイバーに用いられるシリカガラスの構造を変えることで、光の損失を大きく削減できることが判明しました。従来は、シリカガラスの原子構造にアプローチして光の損失を減らそうと研究が行われていましたが、逆の発想で原子構造のない隙間の部分に注目し、そこから光損失の大幅な削減を実現したのです。
これは、シリカガラスに圧力を加えることで実現した新しい技術で、現時点では「構造変化したシリカガラス」を作るに留まっています。しかし、将来的にはこれを光ファイバーに実装し、より遠距離にまで情報を通すことができるようになると予測されています。
大きなメリットが得られる研究への期待
新しい構造を持ったシリカガラスをつかった光ファイバーが実用化されれば、光を増幅するための中継器の数を減らすことも可能です。中継器の設置、維持などには1台につき約1億円かかるため、それが削減できるとなると大きなメリットをもたらすでしょう。
とはいえ、シリカガラス独自の特性はまだよくわかっておらず、さまざまな研究が行われている途中です。今後研究が進めば、もっと違った方法で、さらに情報通信に適した光ファイバーを作ることができるようになるかもしれません。行き交う情報容量が増加の一途をたどる今、これらの研究には注目と期待が集まっているのです。
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東北大学 工学部 電気情報物理工学科 教授 小野 円佳 先生
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