まだまだ謎だらけの「疲労」の正体とメカニズム
「疲労」の正体は一つではない
私たちが「疲れ」を感じるとき、その疲れの正体は、一つではありません。肉体的な原因による疲労もあれば、精神的な理由による疲労や、細菌やウイルスなどの感染によってもたらされる疲労など、疲れには実にさまざまな種類があります。疲労の軽減や回復、抗疲労の方法を見つけ出すには、それぞれの疲れの特徴と原因を分析しなければなりません。
クエン酸は本当に疲れに効くのか
梅干しや柑橘(かんきつ)系の果物に多く含まれているクエン酸は、肉体的な疲労の回復に効果がある、というイメージが世間に浸透しています。クエン酸には、疲れの原因の一つと言われる乳酸の蓄積を抑制したり除去したりする働きがあるとか、糖質の代謝を促進する作用があるなどと考えられているのが、その主な理由です。日本では昔から、「疲れたときには梅干しやレモンのような酸っぱい食べ物が効く」というイメージが根強くあることも、クエン酸が疲労回復に効くと受け止められている理由かもしれません。
クエン酸そのものの研究は進んでいるものの、疲れに対する効能については、まだわからないことだらけです。動物実験でさまざまな条件下で検証してみても、いまだに判然としない部分が数多くあります。ヒトやマウスを用いた研究では、クエン酸が乳酸の除去を促すという報告があります。その一方で、乳酸だけが疲労の原因ではないのでは、という考え方もあります。そもそも疲れに対しては、何を指標にしてその度合いを測ればいいのかということも、実はまだはっきりと定まっていないのです。
疲労は研究しがいのあるテーマ
疲労の複雑な原因とメカニズムの解明が今後もっと進展すれば、なぜ疲れるのか、どのくらい疲れているのか、どうすれば疲れが取れるのか、といった問いに対するより明快な答えも、導き出せるようになるかもしれません。現代において、疲れはまだまだ研究しがいのある、奥深いテーマなのです。
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玉川大学 農学部 先端食農学科 講師 原 百合恵 先生
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