講義No.10987 食物・栄養学

まだまだ謎だらけの「疲労」の正体とメカニズム

まだまだ謎だらけの「疲労」の正体とメカニズム

「疲労」の正体は一つではない

私たちが「疲れ」を感じるとき、その疲れの正体は、一つではありません。肉体的な原因による疲労もあれば、精神的な理由による疲労や、細菌やウイルスなどの感染によってもたらされる疲労など、疲れには実にさまざまな種類があります。疲労の軽減や回復、抗疲労の方法を見つけ出すには、それぞれの疲れの特徴と原因を分析しなければなりません。

クエン酸は本当に疲れに効くのか

梅干しや柑橘(かんきつ)系の果物に多く含まれているクエン酸は、肉体的な疲労の回復に効果がある、というイメージが世間に浸透しています。クエン酸には、疲れの原因の一つと言われる乳酸の蓄積を抑制したり除去したりする働きがあるとか、糖質の代謝を促進する作用があるなどと考えられているのが、その主な理由です。日本では昔から、「疲れたときには梅干しやレモンのような酸っぱい食べ物が効く」というイメージが根強くあることも、クエン酸が疲労回復に効くと受け止められている理由かもしれません。
クエン酸そのものの研究は進んでいるものの、疲れに対する効能については、まだわからないことだらけです。動物実験でさまざまな条件下で検証してみても、いまだに判然としない部分が数多くあります。ヒトやマウスを用いた研究では、クエン酸が乳酸の除去を促すという報告があります。その一方で、乳酸だけが疲労の原因ではないのでは、という考え方もあります。そもそも疲れに対しては、何を指標にしてその度合いを測ればいいのかということも、実はまだはっきりと定まっていないのです。

疲労は研究しがいのあるテーマ

疲労の複雑な原因とメカニズムの解明が今後もっと進展すれば、なぜ疲れるのか、どのくらい疲れているのか、どうすれば疲れが取れるのか、といった問いに対するより明快な答えも、導き出せるようになるかもしれません。現代において、疲れはまだまだ研究しがいのある、奥深いテーマなのです。

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先生情報 / 大学情報

玉川大学 農学部 先端食農学科 講師 原 百合恵 先生

玉川大学 農学部 先端食農学科 講師 原 百合恵 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

栄養学

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メッセージ

自分自身で動いたら動いた分だけ、得られるものがたくさんあるのが、大学で学ぶことの醍醐味(だいごみ)です。義務教育とは違う自主性を持った学びが、大学では大切です。
1~2年生の間は講義を受けて必要な知識を蓄えて、3~4年生では先生とコミュニケーションをたくさん取りながら、「楽しいな」「知りたいな」と思えるテーマを見つけ出して、研究に取り組んでみてください。興味を持てるテーマが見つかったら、きっと楽しくなるはずです。

先生への質問

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―8学部17学科がワンキャンパスに集まる総合大学!―「全人教育」の理念のもと“「人」を育てる”ことをめざす玉川大学は、8学部17学科の学生がワンキャンパスで学んでいます。61万㎡の広大な敷地には、各学科での深い学びに加え、学部学科の垣根を越えた学びの環境を用意。学外での体験型学修や、「使える英語力」を身につける「ELFプログラム」などの独自プログラムも実施しています。また、2020年4月に利用開始した「STREAM Hall 2019」では、農・工・芸術学部が学部の枠を越えた学びを展開します。