機能性の高い日本酒を造るには?
AIで醸造過程を管理する
日本酒を造るには、材料だけではなく、製造プロセスがとても重要です。日本酒の醸造工程に携わる人たちに「杜氏(とうじ)」や「蔵人」という特別な呼称があるほど、知識と経験が必要とされる仕事です。近年の人手不足への対応などから、大手の酒造メーカーは醸造管理に機械学習を使ったAIを導入しています。しかし、機械学習は多種類・大量の学習データやそれを扱う専門家を必要とするため、酒造業界の大半を占める中小規模の事業者にとっては導入のハードルが高いものです。そこで、データの採り方をアレンジすることで、シンプルなデータで8割程度の精度が得られる予測モデルが開発されました。このモデルは統計解析をベースにしたAIを活用したもので、醸造の現場で簡単に扱うことができます。
日本酒は機能性成分の宝庫
日本酒には、さまざまな機能性成分が含まれています。その中でも特徴的なのが、5-アミノレブリン酸(ALA)を多く含んでいることです。ALAはアミノ酸の一種で、ミトコンドリアの活性化、免疫強化などの機能性が確認され、近年注目を集めています。発酵食品に多く含まれ、その中でも日本酒の含有量は突出しており、ワインの2倍、肉の10倍にも及びます。ただし、製造法によって5倍ほどの濃度差があります。よりALAを多く含む日本酒を造るために、この差が何に起因しているのかが研究されています。酵母の影響が大きく、精米具合の影響は小さいことがわかってきており、さらに研究が進められています。
研究成果で酒造業界を活性化
機能性の高い日本酒が開発できれば、酒造業界にとって魅力的な製品になります。ワインについても同様の研究が始まっています。AIを活用した簡便な醸造管理モデルは、酢の原料になる清酒の製造現場で実際に使われており、ほかの日本酒やワインの製造にも応用が可能です。
こうした応用研究では、製造現場に足を運び、協力しながら研究を進めることで、実社会で役立つ成果が得られるようになるのです。
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先生情報 / 大学情報
玉川大学 農学部 先端食農学科 講師 佐々木 慧 先生
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発酵工学、食品化学先生が目指すSDGs
先生への質問
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