「心理劇」を通して「人付き合い」「仲間」を考える
心理劇という手法
あなたは学校の道徳の授業で、誰かの役を演じたり、ロールプレイをしたりした経験はあるでしょうか。それらは集団心理療法の一つ、「心理劇」から生まれたものです。
心理劇は問題や悩みを抱える人たちが複数集まって、台本やセリフを定めずに即興で行います。テーマは参加者が解決したいこと、やりたいことなどを設定します。例えば「失恋」というテーマであれば、参加者でつらい気持ちを分かち合い、ふられた人がどんな気持ちになるのか、周囲はどんなサポートができるのか、といったことを皆で考えて、お互いを支えあいながら問題を解決していくプロセスを体験します。
自閉スペクトラム症の人たちに
心理劇は、自閉スペクトラム症の人たちのケアにも用いられています。発達障害に含まれる自閉スペクトラム症には、好きなものに没頭しすぎてしまうというこだわりの強さのほか、自分の気持ちをうまく伝えられない、相手の気持ちが理解できないといった特徴も見られます。人付き合いに問題を抱える自閉スペクトラム症の人たちにとって、現実のやりとりではなく、守られた空間の中で行われる心理劇から多くのことを学ぶことができます。ある場面で自分はどんなことを周りに伝えたいのか、ほかの人はどんな気持ちになっているのか、一つ一つの気持ちを取り出し、可視化することで、言葉の使い方や、他人の気持ちの理解の仕方を学んでいくのです。
友達がほしいという思いに応える
人間は発達過程、特に思春期になると仲間との関係が大切になります。自閉スペクトラム症の人は仲間という概念を形成しにくいという特徴もありますが、心理劇を通して「自分の気持ちはこの人に理解してほしい」「なぐさめる役はこの人にしてほしい」など、彼らなりの仲間意識が形成されていきます。自閉スペクトラム症の人も、「仲間や友達がほしい」という気持ちを持っています。心理劇という手法には、人付き合いにおいて彼らが感じるもどかしさについて考えて、より生きやすくするという役割が期待されているのです。
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