脳はどうやって「育つ」のだろう?
赤ちゃんの能力を育てるものとは?
人間の赤ちゃんの脳は、外からの刺激や経験によって成長します。「見る」「聞く」という基本的な能力も、刺激や経験が少ないと育ちません。
例えば、目の病気である「弱視」は、子どもの視力が悪い状態で止まってしまうことを言いますが、左右の視力が大きく異なると、脳はよい方の目からの情報だけを採用します。視力が低い方の神経は使わなくなるのです。また近眼がひどい場合は、きちんとした像が脳に伝わりません。すると脳は鮮明な像を経験することができないまま、ぼんやりした世界に適応してしまうのです。いずれもそのまま成長すると、メガネなどで矯正しても、視力の回復は難しくなるので、早い時期に脳に立体感や遠近感、鮮明な世界を経験させることが重要です。
なぜ、難しい? 「LとR」の発音の聞き分け
脳は、入ってくる情報で「何が必要で、何が要らない」のかを判断し、「この能力は強くする、一方は捨てる」を繰り返しています。それが、脳が育つプロセスです。
言語的な例では、日本人は、英語の「LとR」の発音の聞き分けが難しいとされます。実は、日本人でも赤ちゃんの頃は聞き分けられているのです。ところが、日本語にはその区別は必要ないので、日本語だけを使う環境で育つと、脳は能力を捨ててしまい、聞き分けられなくなってしまうのです。
脳をやわらかく、いきいきと暮らそう!
人間が刺激や経験を与えられ、それによって能力を獲得できる時期を「臨界期」と言います。視力の臨界期は、生後1カ月から、7、8歳くらいまでです。能力によって、タイミングと長さが違っていて、社会的な判断をする前頭葉は、10代後半でも、まだ成長過程です。
記憶をつかさどるのは海馬(かいば)です。ロンドンのタクシーの運転手は、市内の地図を全部覚えるというトレーニングを受けます。この厳しいトレーニングの後では、海馬が物理的に大きくなっているというデータがあります。年齢を重ねても、脳は成長することができるのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 医学部 生命科学科 教授 畠 義郎 先生
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