進化する大腸がんの治療 患者の負担を減らす手術や検査とは
大腸がんの手術が進化
日本人のがんの死因としても上位である大腸がんの、新たな手術や治療の方法が研究されています。事例のひとつが「経肛門手術(TaTME)」です。大腸がんの一種である直腸がんは肛門の近くにできるため、従来の開腹手術でがんを取り除く際は肛門も同時に切除する場合があります。すると患者は人工肛門を着けなければならず、生活の質が下がります。一方TaTMEでは、がんの位置により近い肛門から道具を入れるため、精緻な手術がしやすくなりました。その結果、肛門を切除するリスクが低下し、術後も患者の生活の質が保たれています。
手術をしなくても治る?
手術をしない治療方法として、短期間の放射線療法と抗がん剤を組み合わせる手法も研究が進んでいます。オランダで行われた臨床試験では、5日間の放射線治療のあと、12週間抗がん剤を投与して3~8週間ほど待つと、手術の頃には直腸がんの腫瘍が消えたことが報告されています。日本でも臨床試験が行われた結果、約30%の患者の直腸がんが消えたことがわかりました。がんが完治しているかを確認するための手術は行われますが、さらに研究が進んで患者の容体を正確に把握できるようになれば、手術がいらなくなるかもしれません。日本の標準的な治療として認められるように、さらなる臨床試験が行われています。
涙を使ってがんを診断
大腸がんは術後も再発を防ぐために、こまめな検査が必要です。主な方法は採血やCTで、身体的にも金銭的にも患者への負担が大きなものです。こうした状況を改善するために、乳がんの検査で効果が確認されている「TearExo法」を大腸がんにも応用しようと研究が始まりました。涙の中に含まれるエクソソームという物質を分析して行う検査方法です。涙は患者自身でも採取できるので、自宅から専門機関に涙を送るだけで検査ができる日が来るかもしれません。精度を確かめるために、大腸がん患者に採血とTearExo法をどちらも行い、比較解析が進められています。
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