気づいたときには身近な存在に 「低糖質」のイノベーション

気づいたときには身近な存在に 「低糖質」のイノベーション

低糖質はなぜ広まった?

「低糖質」の食品は、2000年代の中頃までは糖尿病患者向けの病院食として使われていました。しかし2010年代にはコンビニやスーパーマーケットなどに広まり、一般の消費者も当たり前のように目にするようになりました。しかも「健康にいいものだ」というプラスイメージが定着しており、好んで選ぶ人も多くいます。低糖質食品市場は誰がどのように拡大させて、社会で当たり前のものになったのでしょうか。

「日常」から起きたイノベーション

企業が公表するデータを分析すると、コンビニの低糖質パン(ブランパン)が低糖質市場の拡大に大きく貢献したとわかります。低糖質パンを最初に売り出したコンビニの本社チームは、経営者が「コンビニ食品は健康に悪い」というイメージを覆そうと方針を決めて、社内で健康な食品の開発チームを結成しました。そして「低糖質の素材を開発したものの使い道が思いつかない」と悩んでいた別の企業と協力し商品を作り上げました。しかし開発当初の低糖質パンは味がいま一つだったため、店舗を経営する全国のオーナーたちから仕入れを断られる、という事態が発生しました。そこで本社の人々は、まずターゲット層である女性に商品の価値を知ってもらおうと、オーナーの妻に低糖質パンを紹介する機会を設けました。妻からオーナーを説得してもらおうと試みたのです。その結果、低糖質パンを仕入れるコンビニが増え、消費者からの需要や認知度が増していきました。

生活に根ざしたイノベーションを探る

低糖質食品のように、社会や市場での価値をじわじわと変えていった商品もイノベーションの事例の一つです。低糖質パンの場合は、まず供給側に商品の魅力を感じてもらうこと、時間をかけて地道に説得して協力者を増やすことなどが、イノベーションを支える重要な要素でした。こうした生活に根ざしたイノベーションの起こし方を可視化するために、身近な商品に関するデータの分析と関係者への聞き取り調査を組み合わせた研究が続いています。

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神戸大学 経営学部 経営学科 経営学研究科 准教授 原 泰史 先生

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メッセージ

将来実現させたいことがあれば、すぐに取りかかりましょう。例えば、いつか起業したいと思っているならいっそ高校生のうちに始めてもいいですし、海外で学びたいならすぐにパスポートをもって渡航してもいいと思います。挑戦する前にまずは万全の準備や練習をしなければ、と難しく考える必要はありません。それでは、大学に行く意味はあるのでしょうか? 私としては、大学は「設備や教員、肩書を活用して目標に挑戦できる場所」だと考えています。新しい知識や技術をどんどん取り入れて、あなたがやりたいことを今すぐ始めてほしいです。

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