画期的な問題解決ができる、今注目の「デザイン思考」とは?

画期的な問題解決ができる、今注目の「デザイン思考」とは?

「デザイン思考」とは

今、医療機器開発の現場で注目されているのが「デザイン思考」です。20年ほど前に、アメリカのスタンフォード大学が提唱した問題解決手法です。
デザイン思考には「共感・理解」「問題定義」「創造」「プロトタイプ」「テスト」という5つのステップがあります。特徴的なのは、文化や物事の解釈の仕方などまで踏み込んで現状を理解する「共感」が、最初のステップに置かれて重視されていることです。そこで問題を見つけ(問題定義)、解決のアイデアを出します(創造)。出たアイデアは練り上げずにすぐに「プロトタイプ」として試作して、改善点を見つけて何度も作り直すというプロセスもデザイン思考の特徴です。

共感を持って理解し、試作を繰り返す

そのデザイン思考を使って、発展途上国向けの保育器を開発した事例があります。保育器とは、新生児を守るために温度管理や感染防止をする箱型の機器です。しかしこの事例では、一般的な箱型にとらわれずに、母親が抱っこできる「おくるみ」のような形の安価な保育器を開発したことが画期的でした。
それができたのは、最初の「共感・理解」のステップで、医学的、工学的な視点だけでなく、「箱に赤ちゃんが入っていると不安になる」という母親の気持ちや、その国の文化、予算までも踏み込んで理解した上で、試作を繰り返した結果です。

高度で複雑な問題を解決できる

医療機器開発では、機械を作る人、メーカーの経営者、ユーザーである医師や臨床工学技師など、さまざまな人が関わります。それぞれに専門性が高いことから、ほかの人が話を理解しきれないといったことが起こり、話し合いが難航します。スムーズな議論のために、一つの専門に偏らず、議論が正しい道筋で進むような調整をする「ファシリテーター」の役割を重視するのもデザイン思考の特徴です。
デザイン思考を用いることで高度で複雑な問題の解決ができるため、医療機器開発だけでなく、さまざまな分野でデザイン思考の導入は進んでいます。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 医学部 医療創成工学科 医療創成工学専攻 特命教授 祗園 景子 先生

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イノベーション教育、システムデザイン

メッセージ

進路を決めるとき、苦手科目や入試の枠に縛られて、やりたいことをあきらめたりしないでください。私は物理や数学が苦手でしたが、生物が好きという一念だけで理系に進みました。いまだに物理や数学は苦手です。でも社会では、自分の得意なことを生かしつつ多分野の専門家と仕事をすることが多く、相手の言うことをある程度理解できる知識があれば大丈夫です。それよりも、答えが決まっていない、答えを出すプロセスすらわからない現実のいろいろな問題を経験することを大切にしてほしいです。

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