大腸がんの死亡率を下げるために

大腸がんの死亡率を下げるために

死亡数第2位の大腸がん

日本でのがん関連死亡数の中で、大腸がんは第2位の要因です。そのため、各自治体は住民に対する対策型検診の一環として、大腸がんの早期発見につながる「便潜血検査」を行っています。大腸がんはしばしば腫瘍から出血を伴うことから、便の中の血液を検知することで、がんの有無を予測できるのです。

便潜血検査と大腸内視鏡検査

しかし、大腸がんの死亡率はなかなか改善されていません。その原因の一つに、検査の精度に問題があるとする考え方があります。日本では便潜血検査で陽性が出ると、より精密な二次検査として大腸内視鏡検査を行います。しかし、アメリカでは検診の最初から大腸内視鏡検査を選ぶこともできます。大腸内視鏡検査は細い管状のカメラを肛門から挿入し、大腸を直接観察してがんなどの異常を探し出す検査です。そのため便潜血検査と比べ、がんの見逃しも少なく、早期発見にも有効であるとされています。

受診率の向上が重要

それでは、日本も大腸がん検診において最初から大腸内視鏡検査を推奨すべきでしょうか。海外の研究によれば、無症状の健康な人を対象に大腸がん予防のために大腸内視鏡検査を推奨した群と、便潜血や内視鏡を含め大腸がん検診を一切推奨しない群を10年間観察した結果、両群の大腸がん死亡率に大きな差は見られませんでした。その理由の一つとして、大腸内視鏡を推奨した群の中で、実際に検査を受けた人がわずか40%しかいなかったことが挙げられます。内視鏡=つらい検査、というイメージを持っている人は多く、自身が無症状で健康ならば検査を受けない人の気持ちも理解できます。大腸内視鏡がいかに有効性の高い検査であっても、受診率が向上しなければ死亡率の改善にはつながりません。つまり大腸がん死亡率を低下させるためには、検査方法を議論する前に、検診の受診率を向上させるための議論が重要なのです。

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帝京大学 医学部 医学科 准教授 阿部 浩一郎 先生

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