がんの予防に「食」は寄与するのか?
食事との関係性が高いと見られる大腸がん
日本人の死亡理由の第1位はがんで、中でも大腸がんの罹患数は第1位です。その予防には食事が大きく影響すると考えられていますが、今のところそれが世間に十分知られているとは言えません。また、この病気に対する食事の効果について現時点ではエビデンス(根拠)が確立されておらず、予防などの選択肢として用いられることも少ないのが現状です。
葉物野菜に注目して効果を実証する試み
大腸がんになる要因の一つに胆汁酸、中でも二次胆汁酸が発がんに深く関わっている可能性が高いと考えられています。実際、大腸がんを発症した患者、大腸がんのリスクが高い患者での糞便中二次胆汁酸濃度は高いと報告されています。
そこで糞便中二次胆汁酸と普段の食事との関連性の調査や、食事の内容を変えてもらいその前後で便中の二次胆汁酸濃度がどのように変化しているか観察が行われています。そこから、何を食べたら病気のリスクを抑えられるのかを考察して、根拠を明確にする試みがなされています。
そんな中注目されているのは葉物野菜です。昔から食物繊維の摂取が少ないと大腸がんになりやすいと言われていましたが、食品によって食物繊維の種類や性質は異なり、不明な点は多々あります。葉物野菜の食物繊維は胆汁酸と消化管の中で強く結合したり、腸内細菌による二次胆汁酸の生成を阻害する可能性があります。今後は、様々な種類の食品の効果を明確にすることが目標とされています。
病気予防の第一歩はバランスの良い食事?
「健康のためには栄養バランスが良い食事」とよく言われていますが、これはあまりにも大きすぎる概念で、大雑把で非科学的な見解と言えます。もっと具体的にどのような食品摂取、食事パターンが、疾病の予防、発症、治療に効果があるのかを、医学的に明確にすることが必要です。臨床栄養学の面から大腸がん予防に迫っているこの研究は、より具体的に何をどうすれば予防の効果があるのか、罹患率を下げることができるかを明らかにすることができると期待されます。
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広島国際大学 健康科学部 医療栄養学科 講師 齋藤 瑛介 先生
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