ウイルスで食中毒菌を制圧 バクテリオファージの特性とは?
減らないカンピロバクター食中毒
有害な細菌やウイルスなどに汚染された飲食物を食べることによって、起こる病気のことを食中毒といいます。細菌による食中毒では、過去20年間、カンピロバクターによる食中毒が最も多く発生しています。カンピロバクターは主に家畜や家禽(かきん)類の体内に生息しています。食肉(特に鶏肉)はカンピロバクターに汚染されていることが多く、加熱が不十分の鶏肉を食べることで食中毒が起こることが多いです。カンピロバクター食中毒を減らすには、食肉に汚染するカンピロバクターを減らすことが重要です。さまざまな対策が取られていますが、その一つにカンピロバクターをバクテリオファージ(ファージ)と呼ばれるウイルスを使って殺菌する研究が行われています。
特定の細菌を攻撃
ファージは、特定の細菌に感染する性質を持っています。地球上のいろいろなところに多様な種類が存在していてヒトの体内にも多く存在しています。研究では、まず、カンピロバクターに感染するファージを探します。次にそれぞれのファージの特徴を調べて、より多くのカンピロバクターを殺菌できるようなファージを選びます。そして、実際に食肉にファージを使用して殺菌効果を検証します。その結果、カンピロバクターの殺菌に効果があるいくつかのファージが見つかっています。
人畜無害で環境にやさしい殺菌方法
カンピロバクターを加熱しないで殺菌する研究は、化学薬品の使用などさまざまな方法について行われていますが、ファージを使った研究は多くありません。ウイルスというと悪者のイメージですが、ファージはターゲットとなる細菌だけに感染するため、人や動物にとっては無害で安全性が高いといえます。また、化学薬品ではないので環境にも優しい殺菌方法です。
外国ではすでにリステリア菌などを殺菌するためファージが食品に利用されています。また、医療分野では、世界的に問題となっている抗生物質が効かない薬剤耐性菌による感染症の治療のためファージを利用する研究が行われています。
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中村学園大学 栄養科学部 フード・マネジメント学科 准教授 古田 宗宜 先生
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