食と農をつないで実現する持続可能な循環型社会
流通システムの複線化が重要
スーパーの生鮮食品売り場へ行くと、季節を問わず品ぞろえが豊富で、様々な食品を手に入れることができます。しかし、この便利さの裏には多くの問題があります。経済効率を追求した現在のグローバルな流通では、食と農が離れ、食の安全性や長距離輸送による環境への負荷、生産者のやりがいの欠如など多くの問題が生じています。これらを解決するためには、グローバルな流通だけでなく、「地産地消」の拡大が必要です。
コロナ禍のようなパンデミックや戦争、災害などが起きると、グローバルなフードシステムがストップする危険性があることがコロナ禍で明らかになりました。地域のフードシステムもしっかり確立されていれば、このような場合にも相互補完できます。
地域への関心を高める
地域の流通を広げていくための研究は、フィールドワークを中心に行われています。農村や小規模農家、直売所など、食と農をつなげる取り組みの現場でインタビューやアンケート調査を行います。また、食と農を結ぶことで経済や食の供給格差などを解消する食料政策が進められているアメリカやカナダなどの実践を調べて分析し、様々な形でフィードバックします。
食の安全性が問題になり始めた2005年頃のアンケート調査では、地域に対する日本人の関心の低さが浮き彫りになりました。その後、徐々に地域への関心は高まりつつあります。地域の物をただ単に消費するだけではなく、地域に関わりを持つことが、自分の食を守り、地域の流通を作ることにつながっていきます。
循環型の持続可能な社会
今後は、さらに農村と都市の持続的な関係を作ることも目標とされています。現在は分断されている農村と都市を、人や物や情報が循環する関係に変えることが、持続可能な社会の構築につながります。その試みの一つとして、東京都墨田区の住民が生ごみをコンポスト化し、それを東武線で栃木県足利市に運んで農業に活用し、できた野菜を墨田区に還元するという構想が実現に向けて進みつつあります。
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先生情報 / 大学情報
宇都宮大学 農学部 農業経済学科 教授 西山 未真 先生
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農業経済学、地域社会学、食と農の社会学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?