痩せていても脂肪肝になる? 謎が多い食べ物と体との関係
食べ過ぎていないのに脂肪肝になる不思議
私たちは生きていくために食事をしますが、摂取した食べ物が体の中でどのように作用しているのか、実はまだよくわかっていないことがたくさんあります。例えば、脂質や糖質の取り過ぎは肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」という病気の原因になります。ところが、タンパク質が不足した栄養失調状態でも脂肪肝になることがわかっており、そのメカニズムはいまだ謎です。低タンパク質食はインスリンの効果を高めるために肥満や糖尿病の対策として期待されている面もありますが、脂肪肝の原因にもなるため、諸刃の剣である可能性は否定できません。そこでタンパク質不足が脂肪肝を引き起こす仕組みを解明するための研究が行われています。
脂肪肝に関わる新しい因子の発見
研究ではラットを使った実験を行い、分子レベルでのメカニズムを調べています。ラットに低タンパク質食を与えて、まず肝臓に脂肪がたまっていることを確認します。肝臓に脂肪がたまるのは、脂肪の合成や分解のバランスが関係していると考えられるため、脂肪の合成・分解を調節する酵素の量や活性を測定します。低タンパク質食を与えないグループと比較して変化が見られれば、さらにその酵素を調節する因子を特定していきます。
こうした実験から、タンパク質が不足すると糖質から脂肪への合成が増加することがわかりました。また脂肪合成の増加を調節している因子が新しく見つかり、それは脂質を取り過ぎた場合の脂肪合成増加を調節する因子とは別のものであることなどがわかってきました。
タンパク質不足と脂肪肝、インスリンの関係
さらに、この新しく見つかった因子には、別の役割がある可能性も示唆されています。それは、インスリンの細胞内へのシグナル伝達に関係するもので、インスリンが働くために非常に重要です。
今後はタンパク質不足による脂肪肝のメカニズムの解明とともに、発見された新しい因子の役割や、インスリンの作用についても明らかにすることが目標とされています。
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