人体は「ちくわ」? 体を病気から守るため腸管バリアを強化せよ!

人体は「ちくわ」? 体を病気から守るため腸管バリアを強化せよ!

不要なものをせき止める腸管バリア

腸は食べたものを吸収する器官ですが、実は腸管内は「体の外」です。人体の構造はいわばちくわのようなもので、腸などの消化管は食物の通り道です。外界である腸管内には、十分に消化されていない食べたものや腸内細菌などが大量にあり、「異物」として「腸の中という体の外」にあるのです。腸の内壁は粘膜に覆われていて、必要なものを取り込み、不要なものは取り込まないという免疫機能を持ち、これを「腸管バリア」といいます。

食物繊維でバリアを増強

腸管バリアはさまざまな機構を持っていますが、そのひとつに「タイトジャンクション構造」があります。細胞と細胞の隙間をファスナーのように閉じる機能をもつ接着分子のひとつで、この構造を食品によって増強したり、保護したりする働きがあります。タイトジャンクション構造を増強・保護するために重要なのが、乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスと、食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスです。
食物繊維とは「食べても消化も吸収もされない食品成分」ですが、健康維持や病気の予防に大きな役割をもち、「第六の栄養素」とも呼ばれています。腸内細菌のエサになり、善玉菌を増やすことが特徴の1つです。研究の結果、一部の食物繊維が、腸管を覆う腸管上皮のバリア機能を増強するということがわかってきました。

機能性補助食品で健康維持

病気ではないけれど、なんとなく腸の調子が悪い、そんな人も多いでしょう。腸管バリアの機能が低下すると、腸の内部に細菌などが入り込み、多くの病気の原因になります。食品成分を通して腸管機能を正常に保つことは、健康維持や病気の予防に役立ちます。一番は規則正しくバランスの良い食生活ですが、現代人はなかなかそれが難しいのが現状です。そんな中で、腸管バリア機能を高めるサプリメントや機能性補助食品の開発は、ますます需要が高まっていくでしょう。

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広島大学 生物生産学部 食品科学プログラム 教授 鈴木 卓弥 先生

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メッセージ

もし進路で悩んで、不安のなかで道を選んだとしても、それは選択が間違っているわけではありません。そこに新しい学問との出会いがあるかもしれませんし、身を置いたところで何をするかが大切です。自分のやりたいことを信じて、学んだことをどこで生かすか、自分の経験の中から道を見つけましょう。
生物生産学部という学部は、日本で1つしかありません。学問分野としては農学部に近いですが、食料資源やエネルギー環境問題まで、グローバルな視点でさまざまな知識を学べます。多様な学問に出会いたいなら、ぜひ一緒に学びましょう。

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