AIが導く安全航海 進化する避航技術
船同士の衝突を避ける
安全な操船の要の一つは、船同士が衝突を回避する「避航」です。船は急ブレーキをかけたり、直角に曲がったりできません。そのため、早い段階で衝突の危険を察知して、回避することが必要です。
計測や通信のための機器の発達に伴い、データを用いて避航を支援する研究が進められて、他船が自船に最も近づく点やそこに至るまでの時間が数値として提供されるようになりました。しかし数値がわかるだけであって、実際にどちらの方向にどのようにかじを切るかの決定は操船者の判断に任されています。この判断の良し悪しには、操船者の経験による差が大きく表れます。例えば操船者の経験が浅い場合、大きく回り込むことで衝突は避けられても、予定航路からも大きく外れてしまって運航効率を下げるなどの問題が発生してしまうのです。
衝突危険領域を可視化
そこで、経験の浅い操船者でも適切な避航が行えるようにするために、「衝突危険領域(OZT)」を可視化することで判断を支援する手法が開発されました。すなわち、その時点での他船と自船の向きや運動量などの情報から、衝突する危険のある領域をコンピュータが算出して画面上に表示します。この手法により、より適切な避航判断が行えるようになりました。
しかし、他船の針路変更でOZTも変化する場合があります。熟練操船者は、他船の針路変更を予想して適切なかじ取りを行っています。そこで、熟練操船者のスキルをAIに学習させることで、他船の動きの予想も踏まえたOZTを算出・可視化するとともに、最適な避航ルートを提示する手法が開発されました。この手法は、避航だけではなく、操船者のスキル評価にも役立てられています。
自動化で未来を開く
少子化による人手不足は船の世界にも及んでおり、熟練した船員の確保が困難となりつつあります。この問題に対応するためにも、避航や着岸を支援する操船支援システムや、自動航行システムなどの研究が必要とされているのです。
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