「良いものは売れる」とは限らない。経営を制する条件とは?
「良いものを作る」≠「良いものをどう売るか」
百年以上の歴史をもつ店が倒産の憂き目に遭うことがあります。それだけの年月を生き抜いたわけですから、販売する商品の品質は確かなはず。にもかかわらず、老舗とよばれる店が倒産するのはなぜでしょうか。
実は、「良いものは売れる」とは限らないのが経営の難しいところなのです。「良いものをどう作るか」だけでなく、「良いものをどう売るか」という販売戦略・戦術の確立も、企業の存続のためには欠かせません。コンビニを例にとって、それを示してみましょう。
計算された商品陳列
販売戦術の一つに商品の陳列がありますが、実はコンビニの商品陳列は、とても精緻な人間工学分析の上に行われています。例えば、本棚はいつも本のタイトルと表紙が見えるように並んでいます。また、レジの前にあるフランクフルトなどの商品は、レジ待ちの間に「あ、これも」と衝動買いを誘うように、その位置が設定されているのです。ほかにも商品棚が女性や子どもの背丈に合わせて陳列されているなど、さまざまな計算のもとに商品陳列がなされています。このように、普段何気なく手にとっている商品も、裏では非常に緻密な計算がされているのです。
発注を制するものが経営を制する
また、販売戦略には品揃えも重要です。特にコンビニは、限られたスペースの中に商品を陳列するわけですから、これが生き残りのための生命線ともいえます。品切れが続くと、「あの店に欲しいものはなかった」と客離れの原因になります。一方で品切れしないように在庫を抱えると、今度は売れ残って廃棄する物が多くなり、無駄なコストが増えてしまいます。
このように適切な品揃えは、コンビニに限らず販売活動の一環として不可欠な要件です。アルバイトに発注を任せていると聞くことがありますが、もってのほかです。量販店などはマーチャンダイザーといって仕入れ専門の担当がいますし、対面販売を中心に行っている店では、仕入れの際にはお客様の顔を思い浮かべるといいます。競争が激化する昨今、「発注を制するものが経営を制する」のです。良いものを作るだけでは経営は成り立ちません。「良いものを作り、どう仕入れて、どう売るか」の三拍子が揃って企業の存続基盤が確立します。それが、経営を制する条件とも言えるでしょう。
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東京海洋大学 海洋工学部 流通情報工学科 教授 黒川 久幸 先生
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