粒子法で開く、波力発電の未来
環境にやさしい波力発電だが
波をエネルギーに変える「波力発電」は、環境負荷の低い次世代の発電方法として世界中で研究が進められています。発電装置の形状は3種類あります。波による水位や圧力の変動を浮体や受圧板の運動に変換する「可動物体型」、波を強制的に装置にぶつけることで、貯水槽との水面の高低差を利用して発電する「越波型」、波による装置内の水面変動を空気の流れに変換し、タービンを回すことで発電する「振動水柱型」です。
波力発電は、世界でもまだほとんど実用化されていません。自然発生する波を利用するからこそ、社会インフラのひとつとして稼働させるには発電効率があまり良くないこと、台風などの荒天時に強く高い波が押し寄せると壊れやすいことが、なかなか実用化に結びつかない理由です。
波や装置を数式で表し、シミュレーションする
荒天でも壊れにくい発電装置をつくるといっても、荒天時の海上で実験を行うことは難しいため、基本的には数理モデルを用いたシミュレーションで波が装置に与える影響を予測します。まずはシンプルな波や装置の動きをコンピューター上で数式化してシミュレーションし、その結果が正しいと言えるのかを実験で検証した上で予測の精度を高めていきます。ただ、荒天時の波や波を受ける装置の動きは非常に複雑です。荒天時の様子をなるべく正確に再現できるようなシミュレーション手法はまだ確立されていません。現在はその手法の確立に向けて、さまざまな研究者が計算と予測、実験を繰り返しながら研究を進めています。
波力発電の実用化に向けて
今後研究が進み、荒天時の波の影響をある程度予測できるようになれば、発電効率と耐久性をバランスよく兼ね備えた形状の波力発電装置を生み出すことにつながります。そのような発電装置は、普段は波が低く、台風などの荒天も起こりやすい日本では必須のものです。日本でもいつか、波力発電を再生可能エネルギーの選択肢のひとつとして選べる日が来るかもしれません。
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東京海洋大学 海洋工学部 海事システム工学科 助教 笹原 裕太郎 先生
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