気候予測の精度を上げる、波の振る舞いの解明
大きな波は長い旅をする
池や湖、そして海の波は、風が吹くことによって起きる現象です。風がないときの池や湖の表面は鏡のようにフラットです。風が立ち始めることにより、さざ波が起こり、どんどん大きくなっていきます。風が強いときには波が高くなりますが、風が止まっても波だけは遠くに伝わっていきます。例えば、サーフィンの適地であるハワイやカリフォルニアの大きな波は、南極の周りの低気圧によって生まれ、1万キロ近くを旅してきたものなのです。遠くから来た波と近くで生まれた波が交わることが、海の波の振る舞いを複雑にしています。
波は風を弱め、海をかき混ぜる
風は上空ほど強く、地面や海面に近づくほど弱くなります。陸地や海面が風にブレーキをかけるためです。海面でのブレーキのかかり方、すなわち摩擦の強さは波の発達度合いによって変わります。直感的には波が高く大きいほど摩擦が強いイメージかもしれませんが、実際には小さな波の摩擦の方が大きいと考えられています。若い波は風からエネルギーを奪って、風の強さに見合うように発達しようとするからです。
波は海の中にも影響を与えます。日光を受けて温まった表面近くの水と、下の方の冷たい水をかき混ぜるのです。かき混ぜられて温度がほぼ一定になった水の層を「混合層」と呼びます。この混合層の温度や厚さは気候予測において重要な要素であり、気候予測シミュレーションの精度向上のために活発に研究がなされています。
波の振る舞いをシミュレートする
波は地球全体の気候に対して大きな役割を果たしており、気候予測の精度向上のために、波に関する理解をより深めることが必要です。波の振る舞いを調べる方法には、現場での観測や実験があります。しかし、両方とも物理的な困難があるため、コンピュータシミュレーションによる研究も進められています。現在はシミュレーションプログラムが開発された段階で、今後、さまざまな条件でのシミュレーションが行われ、新たな知見が積み重ねられることが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 海洋政策科学部 海洋政策科学科 助教 藤原 泰 先生
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