子どもは自己意識をいつから持っているの?
自己認識度を調べるには
大人は鏡を見て、鏡の中に映る姿を自分だと当たり前のように認識しますが、赤ちゃんはどうでしょうか? 「私は私だという自己意識は最初から自明のものか」という、子どもの発達を研究するときにしばしば問われるテーマがあります。
この問いは、「マークテスト」という実験で調べることができます。赤ちゃんに気づかれないように、鼻や頬などに口紅をつけて鏡を見せます。口紅のついた部位を触ったり拭ったりすれば、「鏡の中の姿が自分だ」と認識していると判断します。
何歳で“わたし”がわかるか?
マークテストを行うと、1歳前半の子どもでは、口紅のついた部位を自発的に触る子どもはほとんどいません。しかし、1歳後半になると、教えられなくても自分で口紅を拭う子どもの割合がグンと増え、約6~7割に達します。つまり、1歳後半で多くの子どもが自己認識できるようになるのです。またこのころ、恥ずかしい・照れくさいといった複雑な感情も表れるようになります。
自閉症の子どもの場合、同じように発達年齢1歳後半で口紅を拭う子どもはいますが、自己鏡像に対する感情の表し方は独特なものであることが多いようです。発達心理学の分野では、このような研究を積み重ね、障がいのある子どもたちへの適切な支援を考える資料も提供してきています。
進化の謎を解き明かす
人間以外の動物で、このマークテストを行うとどのような結果になるでしょうか? チンパンジーやオランウータンなどの大型類人猿は、このマークテストをクリアしました。つまり、自己認識ができるという結果が出たのです。
子どもの発達研究を通じて、興味深いことがたくさん見えてきます。ほかの動物との比較を行うなど、さまざまな角度から子どもを見れば、進化の謎を解き明かすような、さらに興味深い事実が見つかるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 国際人間科学部 子ども教育学科 教授 木下 孝司 先生
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