臨床工学技士の知識や経験が、画期的な治療法に結び付く
高度な医療には欠かせない「臨床工学技士」
2020年から新型コロナウイルス感染症が世界中にまん延しました。この時期に話題になったのが、ECMO(エクモ)と呼ばれる人工心肺装置です。この装置は、患者さんから血液を取り出して、人工肺を使って血液中の二酸化炭素を取り除き、血液に酸素を加えて、再び体内に血液を戻すという仕組みです。
このような高度な医療機器を臨床の現場で扱うのが「臨床工学技士」という仕事で、医学、工学、両方の知識を学んだ専門家です。
特定の病院でしか使えない高度な医療機器
ECMOは、血管に太い管を挿入するために患者に大きな負担がかかり、感染症や合併症のリスクが高まります。そのため、経験豊富な医師や看護師、臨床工学技士のチームが必要となります。しかし、新型コロナウイルスでは、急激な患者数の増加のため、専門知識や経験の少ない病院でもECMOを使用せざるを得ず、大きな混乱が生じました。今後も、新たなウィルスによるパンデミックが世界を恐怖に陥し入れる可能は十分にあります。その時に備えて、どんな病院でも高度な医療が行えるような医療機器の開発を行い、多くの患者さんの尊い命を救うことが重要な課題となっています。
臨床工学技士の視点で目指す医療機器開発
そこで、ECMOや人工呼吸器による治療で発生する合併症や新たな感染症のリスクを回避することができて、病院の規模、年齢などに関係なく、誰もが平等に治療を受けることができる、これまでと異なる方法で肺の機能を補う医療機器の開発が目指されています。そこで、「ウルトラファイン・バブル」というユニークな特徴を持った1μm以下の極微小の泡が、医療の分野に応用できないかと考えられました。この医療機器開発アイデアは、医療と工学の知識を持ち、かつ臨床現場のニーズを知り尽くした臨床工学技士の視点から生まれました。新しい技術と医療現場のニーズがマッチングして開発されるこの医療機器が多くの人命を救うと期待されています。
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