医療のプロの「目」「耳」「手」を、ロボットで再現する
超音波を利用した温存療法
デジタル化の波は、医療やバイオテクノロジーの分野にも、大きな変革をもたらしつつあります。例えば、患者がベッドに寝るだけで音波による診断ができ、超音波を患部に当てることで治療までできるというベッド型ロボットが開発されています。超音波なので被ばくの心配がなく、非接触で行えるため患者の負担が少ないという利点があります。
また例えば、前立腺がんの治療では、がん組織の摘出によって周囲の神経を傷つけ、術後に機能障害が起こることがありました。しかし、AIによる画像診断を利用すれば、高い精度で狙った箇所に超音波を照射することができ、がん以外の組織を極力残す温存療法が可能になります。
「医デジ化」で、どこでも誰でも高度な医療を
画像処理技術の発達によって、遠隔地からの診断ができ、さらに医療ロボットを使用すれば遠隔操作での治療もできるようになります。医療ロボットの優れた点は、精度の高い診断・治療ができるところです。世界のどこにいても、高度な医療を受けられる、これが医療のデジタル化=「医デジ化」のめざす目標です。
医デジ化で大きく期待されているのは、ロボットによる「医療のプロの世界観」の再現です。優れた観察眼や、知見の蓄積による診断、手術の腕といったプロのスキルを、デジタルな関数として置き換えができれば、ロボットが同じ能力を再現することができます。ロボットさえあれば、熟練した医師しかできなかった治療が、経験の少ない医師もできるようになるわけです。
デジタル化は、指数関数的に発展する
こうした技術革新は、少しずつ進んでいきますが、ある程度の蓄積ができていくと、指数関数的に発展していくようになります。それは、技術やお金、プロジェクトといった各要素の組み合わせだけでなく、分野の垣根を越えた人のネットワークについても同じです。多くの人が関わり、多くの知見が得られれば得られるほど、デジタル化による医療の進化は飛躍的に進んでいくのです。
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先生情報 / 大学情報
電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) 先端ロボティクスプログラム 准教授 小泉 憲裕 先生
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