「車を運転する人が飲むためのビール」が人気の理由

「車を運転する人が飲むためのビール」が人気の理由

決定的に違う0.5%と0.00%

ノンアルコールビールは1980年代から市場に出回っていますが、0.5%程度とわずかながらもアルコールが含まれているのが一般的でした。しかし新しく発売されたノンアルコールビールは、アルコールが0.00%、まったく含まれていません。一体誰が、どんなときに飲む商品として開発されたのでしょうか。

ドライバーを相手に前代未聞の試飲キャンペーン

アルコール0.00%のノンアルコールビールを発売したメーカーは、真っ昼間に高速道路のサービスエリアで試飲キャンペーンを行いました。少しでもアルコールが入っていれば飲酒運転の補助となってしまいます。アルコール0.00%だからもちろん大丈夫とはいえ「ビール」をドライバーに試飲させる意外性が受けて、キャンペーンは大成功しました。ここからノンアルコールビールは、「車を運転する人が飲むためのビール」というイメージが浸透したのです。
このときキャンペーンで試飲した人たちの評価も上々でした。彼らはこの商品をビールの代わりとしてではなく、まったく新しい飲み物として楽しんだのです。ビールの好きな人が居酒屋でノンアルコールビールを飲んだら、つい本物のビールと味を比べてしまうでしょう。それではノンアルコールビールが不利になります。だからメーカーは、まったく新しい楽しみ方をビールの好きな人に知らせたのです。

新しいお客をつくり出す

アルコール0.00%のビールなら、妊娠中の女性でも安心して飲むことができます。学校の先生がランチタイムに飲んでも大丈夫です。従来ならアルコールを飲むことなどあり得ないシーンで、堂々と楽しめます。CMも夜ではなく、昼間にたくさん放送されました。これも昼間から楽しめる商品であることをアピールするためです。
ビールというごくありきたりな商品でも、視点を変え、従来とは違う顧客を狙ったマーケティングを展開することで、新たなヒット商品になるのです。

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神戸大学 経営学部  教授 栗木 契 先生

神戸大学 経営学部 教授 栗木 契 先生

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経営学、マーケティング

メッセージ

マーケティングの基本的な考え方は、今から100年ほど前に誕生しました。そのセオリー(理論)を活用することで、例えば20世紀初頭の大量生産の旗手フォード自動車も、その約70年後に世に出たカップヌードルもヒット商品となった理由を読み解けます。時代が変わっても不変のセオリーがある一方で、モノの売り方はどんどん変わってきています。激しく移り変わる世の中を対象に、まだ誰もとらえたことのない新しいモノの売り方の仕組みや構造をつかんでいくところが、マーケティングの面白さです。

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