IoT社会を支える半導体とは

電子デバイスの王様シリコンの弱点
現在のIT社会においてスマートフォンやパソコン、車、ゲーム機など、あらゆるモノをつなぎ、動かしているのが半導体です。半導体技術は、これから到来する「IoT社会」の発展を支えるものでもあります。半導体の材料であるシリコンは、もはや電子デバイスには欠かせない元素で、IC(集積回路)やトランジスタとして情報を処理する機能のほか、光を電気に変える機能も持つため、太陽電池にも使われています。ただし、シリコンは近赤外光を検出できないため、近赤外光を電気に変換するにはシリコンとは異なる「光半導体」が必要です。
既存の光半導体が直面する課題
近赤外光は、光通信や、夜間でも人やモノを認識できる自動運転用カメラやスマホの顔認識カメラ、農業分野での生育モニタリング、医療診断、宇宙からの地表観測など、幅広い分野で利用されています。これらの機器には光半導体が不可欠ですが、現在使われている光半導体はレアメタルのガリウムやインジウム、毒性のあるヒ素を材料とするため、供給の問題や人体や環境への影響が懸念されています。そこで注目されているのがシリコンと金属の化合物である「シリサイド」を使った新しい半導体です。
環境に優しい次世代のグリーン半導体
シリサイド半導体の一つである鉄シリサイドは、地球に豊富に存在しかつ無害な鉄とシリコンで構成されています。鉄シリサイドには、近赤外光を吸収して検出する光半導体としての特性があります。また、シリコン基板の上に成長可能なため、既存の半導体技術にもなじみやすいのです。これはシリコンと相性の悪いガリウムやインジウムの化合物半導体に比べて、大きな利点であるといえます。
鉄シリサイドは、持続可能な社会を支える環境に優しいグリーン半導体として期待されています。ただし、現段階では化合物半導体の性能にはまだ達していないため、宇宙よりも真空な環境の装置の中で原子レベルに並べて、高品質な薄膜として成長させる技術の開発が進められています。
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九州工業大学情報工学部 物理情報工学科 教授寺井 慶和 先生
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