コンピュータで薬の効能を見つける! 新しい時代の創薬とは?
コンピュータで薬の作用を予測する
私たちは薬を飲むとき、「この薬は〇〇の症状を抑え、こういう副作用がある」などの効能の説明書を読んで納得しています。ただ、薬を飲んである症状が治まったり病気が治ったりするとき、体内でどのような反応が起きているか、実は、はっきりとわかっていない部分も多いのです。
そこで、その未知の部分を、機械学習や数理モデルを活用してコンピュータで「計算」することによって予測し、これまで知られていなかった副作用や、薬の新しい効能を見つけようという研究があります。
数理モデルで反応プロセスを予測する
「数理モデル」とは、世の中の社会現象や自然現象を、数学の理論などを応用して表す「数式」です。薬の研究では、薬を細胞に添加してから一定時間後に薬の影響を観測しますが、その間に、薬がどのように作用したのかわからないという問題があります。そこで、その時間内にどういう反応が起きているかを、時間ごとの状態を数理モデルで計算して予測する手法が求められています。その過程でどのような反応が起きているか、新しく生成される物質が何か、などがわかれば、副作用を推測したり、その薬の新しい効能の可能性を見つけたりもできます。特定の現象について数式をつくってデータを当てはめることによって、結果を予測できるのです。
欠けたデータを計算で埋める
また、数式を使うと、利用できるデータを増やすこともできます。
例えば、約2万種類の薬について、遺伝子の発現(遺伝子からタンパク質をつくるプロセス)に関するビッグデータはすでにあるのですが、完全なデータではありません。それぞれ約2万個の遺伝子を持つ100種類の細胞の一つひとつに薬を与えて、遺伝子の発現を確認するという、気の遠くなるような作業が必要になるため、欠けているデータをとるには時間がかかります。その欠けている部分を計算で推測することによって、データの蓄積を待たずに利用できるようになり、研究のスピードを上げられるのです。
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