新しい材料開発で、太陽電池の発電能力を倍以上に
半導体で太陽光を電気に変える太陽光発電
再生可能エネルギーの太陽光を電気エネルギーに変換する太陽光発電は、石油や石炭、原子力発電に使われるウランといった有限資源を必要とせず、温暖化も抑制するので、持続的な社会を作るためにはどうしても必要です。
太陽光発電は、太陽電池を使って光エネルギーを電気に変換します。太陽電池は半導体で作られており、今のところ太陽光のエネルギーのうち、約20%を電気に変換できます。この変換効率を上げることが、技術的な課題となっています。
太陽電池の仕組み
半導体が太陽光を吸収すると、電子が励起して高いエネルギー状態になります。これをプラスとマイナスの電気に分離するのがPN接合です。PN接合は、P型半導体とN型半導体をつなげたもので、この構造によって内部に電界ができるため、光が当たると電気を取り出すことができます。ただ、光が当たっても一定以上のエネルギーがないと電気は生まれません。半導体には外部エネルギーを与えても、電子が励起しないバンドギャップという領域があり、これを超えるエネルギーのない光は吸収されないためです。このバンドギャップは、半導体の材料で決まります。現在はシリコンが主流ですが、その理論的なエネルギー変換の限界値は約30%です。そこで、もっとエネルギー変換効率のよい材料の研究開発が行われているのです。
中間バンドで多くの電気を取り出す
エネルギー損失が生じるのは、バンドギャップを超えない光が透過して、大きすぎるエネルギーは熱に変わるためです。つまり、ある程度のバンドギャップの幅を保ちつつ、透過する光を少なくすれば、エネルギー効率を上げることができるのです。そのひとつの方法が、バンドギャップの中に飛び石のように中間バンドを作る方法です。こうすれば、透過する光を吸収できます。これは、亜鉛とテルル、酸素から成る材料で可能です。この方法ならば、理論的な限界エネルギー変換効率は60%に上昇します。今、中間バンドを持つ半導体の実用化に向けて研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
佐賀大学 理工学部 理工学科 電気電子工学部門 教授 田中 徹 先生
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