安心な社会は信頼できるシステムから―信頼できるシステムの実現―
LSIの故障検出・診断
コンピュータの誤作動を防ぐためには、その頭脳ともいえるLSI(大規模集積回路)の高い信頼性が欠かせません。LSI内部の回路は極めて微細で、故障をゼロにすることは不可能です。そのため、出荷前の限られた時間で故障を検出する技術が開発されています。LSIに物理的な欠陥が起こった時のふるまいをモデル化することにより、故障を検出するだけではなく、原因を特定する故障診断も行うことができます。最近登場したAI専用チップは積和計算(重みと掛け算した結果を足し合わせる演算)を高速に繰り返すもので、従来の汎用(はんよう)LSIとは異なる構造で設計されています。これに適した故障検出・診断技術の確立も急がれています。
電気自動車の安全のために
出荷時に問題がなくても、使用している間に劣化して故障することもあります。そのため、稼働中に故障や劣化を見つける技術も開発されています。一例が、電気自動車のパワーオンセルフテストです。走り始めるために電源を入れた時や交通信号待ちなどのごくわずかな時間に、安全を確保するために必要なテストを行うテスト技術が開発されています。
近年は、自動車もネットワークにつながるようになり、悪意のある人に操作されてしまう危険性が生まれました。そこで、操作権限の有無を判定する認証機構の組み込みなど、セキュリティを担保するための研究も行われています。
広義の信頼性ディペンダビリティ
自動車が故障して突然止まると大事故になりかねません。壊れそうな機能をシステムが理解して、その機能を使わずに安全に車を動かすモードに切り変われば安心です。このように、システムの一部に障害が発生してもシステムを停止せずに継続処理できるようにすることを「フォールトトレラント」といいます。これまに悪意のある第三者からシステムの不正利用を防ぐセキュリティとフォールトトレラントは別々に研究されてきましたが、近年は両者を「ディペンダビリティ」という上位概念にまとめ、統合した研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
愛媛大学 工学部 工学科 コンピュータ科学コース/応用情報工学コース 教授 高橋 寛 先生
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