コンピュータソフトウェアによる計算化学
計算化学とは?
計算化学とは、その名の通りコンピュータによる計算を使用した化学です。これを難しく言うと、「理論に基づき分子とその物性、合成法などの化学に関する問題をコンピュータの支援により解決する学問」ということになります。より広い意味では「物質を原子・分子レベルからコンピュータ上にモデル化し、種々の物性・物理や化学現象の解析や予測を行う学問」と言えます。では、なぜコンピュータ上にモデルを作る必要があるのでしょう?
コンピュータ上にモデル化する意味とは?
例えば、カレーを作ることにします。まず市販のルーを使うべきか否か、から始まって具の選択、ゆでるのか、炒めるのかと、選択肢は多彩です。とりあえず鶏肉をゆでて、玉葱と人参を炒めてみたけれど、できたカレーは不味い。やっぱり玉葱の後に鶏肉を加えて一緒に炒めるべきだったかも、と反省したところで、もう作ってしまったのですから失敗作を捨てて、最初から作り直すしかありません。一人一人が、異なる味覚を持っているからには、美味しい料理の作り方は一通りとは限らず、できてみるまではわかりません。不味ければ、諦めて食べるか捨てるかの選択です。
もしここに味覚を数値化して、材料や料理の手順を入力していくことによって調理結果を計算し、美味しいか、不味いかをあらかじめ判定してくれるコンピュータがあれば、実際に作る前に材料と手順を確認することができるので、材料や時間を無駄にすることなく、自分の理想とする味のカレーが出来上がります。これが、コンピュータ上にモデル化する意味で、コンピュータシミュレーションとも言います。
計算化学の狙い
化学分野は従来から実験を行うことによって結果を確かめてきましたが、技術が高度になり実験も複雑化し、費用もかかるようになりました。そこで、新しい料理方法の結果を事前に予測するように、新しい化学物質を実際に作成する前に最適な候補を予測しておくことで、実験にかかる時間や費用を節約することができるようになるのです。
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東北大学 未来科学技術共同研究センター 教授 宮本 明 先生
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