ピントが合わない「変なカメラ」が医療現場の役に立つ!?
従来のカメラが使えない場所
普通のカメラの仕組みでは、レンズを通った光がフィルムや撮像素子(光を検知するセンサー)上に焦点を結ぶことで、ピントの合った像が現れます。ピントを調整するために、レンズの厚さを変えたり焦点を結ぶ位置までの距離を変えたりします。ピントが合わないとぼやけた画像になります。
このように、従来のカメラにはレンズが必要なため、撮影する場所には一定の大きさの空間が必要で、小さなスキマなどでは使えないこともあります。
「ピントがずれた」画像を撮るカメラ
このようなカメラの限界を超えるため、「変なカメラ」の研究が進んでいます。例えば「レンズを使わない薄いカメラ」は、レンズを使わないので「焦点」がない、つまり「ピンボケ」画像しか撮れず、明るいか暗いかという「光の強さ」しかわかりません。しかし、そうした画像から情報を取り出し、コンピュータで計算することによって、正確な画像を描くことができるのです。
これを可能にする技術の一つは、スクリーンを使う方法です。ゲームのテトリスのパーツのようなさまざまな黒いパターンが描かれた透明のシートを何万枚も用意し、カメラと被写体の間に置いて光を通過させ、何万通りもの「光の強さ」を測ります。パターンによって検知する光の強さが変わるため、その測定データをコンピュータが「連立方程式」を組んで計算すると、画像が生成できるのです。
細胞の厚みまで測れる「変なカメラ」
また、同じような原理を応用したカメラで、透明な細胞の厚みまでわかる、立体的な画像を撮影することに成功しました。人間の細胞はほぼ透明です。透明なものは透明であるがゆえにピントが合う撮影ができませんが、ピントがずれた画像から情報を抽出し、コンピュータで計算することによって、細胞を見ることができました。
従来、医療現場では大がかりな顕微鏡などを使って細胞を調べていますが、このカメラが普及すれば、もっと簡便な方法で、安価に検査ができると期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
和歌山大学 システム工学部 システム工学科 電気電子工学メジャー 教授(学部長) 野村 孝徳 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
光学、情報工学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?