講義No.01086 薬学

難治性のC型慢性肝炎に新アプローチ

難治性のC型慢性肝炎に新アプローチ

C型慢性肝炎の肝臓には鉄(Fe)が多い

最近の研究で、C型慢性肝炎の患者さんの肝臓の細胞には、鉄が通常より多いことが確認されました。鉄は、生物の体内で悪さをする活性酸素・フリーラジカルを増やし、活性化させます。当然、肝臓内でも、鉄の増加により、活性酸素・フリーラジカルの働きが活性化し、肝臓の細胞を攻撃し、肝臓にダメージを与え、肝機能を低下させる「鉄ストレス」と呼ばれる状態が発生します。
そこで、C型慢性肝炎の患者さんの血を抜く「瀉血(しゃけつ)療法」、すなわち肝臓に集まった過剰な鉄を減少させ、「鉄ストレス」を抑える方法が考案されました。
薬品の効きが悪いC型慢性肝炎の患者さんの血を抜いて、一時的に貧血状態を作り出してみると、肝臓の鉄が減少した赤血球を作るために使われ、肝炎が沈静化することがわかったわけです。(瀉血療法が有効かどうかは患者さん1人1人で違います。きちんと主治医に診断を受けて判断することが大切です。)

「瀉血療法」はなぜ有効? 

瀉血療法はその有効性が確認されています。
しかし、C型慢性肝炎でなぜ鉄が肝臓に蓄積するのか、肝臓の細胞の中で、鉄はどんな活性酸素と反応しているのか、ほかにも、別に何か因果関係はないのかなど、「研究者の目」を通して瀉血療法を考え直してみると、まだまだはっきりとわからないことがたくさんあります。そこでラットやマウスの培養した肝細胞を使って、鉄が実際の細胞内でどう動き、その結果、どんなメカニズムで活性酸素を発生、あるいは作用を増強させているのかを、薬学部の持つテクニックを使って明らかにするわけです。このような実験・研究は大変地道なものですが、一つ一つ明らかにしていくことで、得られた結果を臨床の現場に返すことにより、瀉血治療がより安全なものになり、多くのC型慢性肝炎で悩まれている患者さんにとってメリットが生まれることにつながります。

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徳島大学 薬学部  教授 土屋 浩一郎 先生

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