講義No.13655 医学

体を傷つけずに「生体内の化学工場」を調べるには?

体を傷つけずに「生体内の化学工場」を調べるには?

肝臓は生体内の化学工場

肝臓は、生命活動に必要な物質を作ったり、いらなくなった物質を分解・排せつしたりと数多くの重要な働きをこなします。何千もの酵素を使い、500種類以上の化学変化を起こしていることから、「生体内の化学工場」と呼ばれています。とても大きな臓器で、大人の肝臓は体重の約1/50の重さがあります。
脂肪肝は肝臓に脂肪がたまった状態で、肥満や酒類の飲みすぎなどが原因です。自覚症状はほとんどありませんが、放っておくと肝炎になることがあります。肝炎が続くとだんだん肝臓の組織が硬くなり、機能が落ちて、肝臓全体が硬くなる肝硬変や、肝臓がんになるリスクがあります。脂肪肝は禁酒やダイエットでよくなりますが、硬い部分が広がるにつれて健康な肝臓に戻すのは難しくなります。早く見つけて治療することが大切です。

肝臓の硬さや脂肪量を調べる

脂肪肝の診断には、肝臓に針を刺し組織をとって調べる肝生検が行われます。肝生検は入院が必要で、患者への負担が大きい検査です。また、大きな肝臓のほんの少し、つまようじの先くらいの量しかとらないため、肝臓全体を捉えられないという欠点もあります。
そこで、体を傷つけない非侵襲(ひしんしゅう)的診断法(Non-Invasive Test、NIT)の開発が期待されています。肝臓の診断のポイントは「硬さ」と「脂肪」です。画像検査機器・技術が進化し、硬さも脂肪も超音波検査やMRI検査でわかるようになりました。画像診断なら体を傷つけずに肝臓全体の様子を見ることができます。

画像診断×バイオマーカーで診断力アップ!

血液中のたんぱく質や遺伝子の中で、病気の有無や病状の変化を示す物質であるバイオマーカーを、血液検査で調べるのもNITの一つです。マウスによる基礎研究やヒトへの臨床研究から、脂肪肝や肝臓の硬さを示すバイオマーカーが発見されて実用化されています。より正確な診断のために、画像検査とバイオマーカーを組み合わせるNITの開発も進んでいます。

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先生情報 / 大学情報

大阪大学 医学部 保健学科 放射線技術科学専攻 教授 鎌田 佳宏 先生

大阪大学 医学部 保健学科 放射線技術科学専攻 教授 鎌田 佳宏 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

超音波診断学、肝臓病学、医学

先生が目指すSDGs

メッセージ

10代の今しかできないことはたくさんあります。失敗がこわいかもしれませんが、10~20代のうちに多くのチャレンジをして、失敗を繰り返した人のほうが大成する可能性が高いと思います。研究もうまくいかないことの繰り返しで、仮説と結果が違ったなら、なぜそうなったのかを考えて次の研究に生かします。失敗したからこそわかることがあり、その積み重ねで新たな発見が生まれてきます。友だちを作る、遊ぶ、恋をする、新しいことを始めるなど、守りに入らずいろいろなことにチャレンジしてください。

先生への質問

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大阪大学に関心を持ったあなたは

自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。