1粒で2度おいしい! お得な薬の話
血圧を下げたら……
高血圧の患者さんには、血圧を下げる薬である降圧剤を処方することで、心筋梗塞や脳出血、腎臓障がいのリスクを回避します。しかし、ある種の降圧剤を飲んでいる患者さんたちには、それ以外の降圧剤を飲んでいる患者さんに比べ、ある種の病気にかかる確率が下がる傾向があることがわかってきました。
さらに詳しく、大規模に調べてみると、この薬を処方された患者さんたちは、体内で過剰に発生した「活性酸素」が関係する病気にかかる頻度が低かったのです。
活性酸素は至る所で作られる
活性酸素について、少し説明をしましょう。活性酸素はこれまでは細胞内のミトコンドリアでATPを生み出す“電子伝達系”で漏れ出した電子を酸素分子が受け取り、活性酸素へと変貌すると考えられていましたが、最近の研究によると、活性酸素は細胞の表面に存在するある種の酵素によっても作られることがわかってきました。このことは、活性酸素は特殊な分子ではなく、全身の細胞で作られる分子であることを意味します。活性酸素は目的を持って作られるうちは、体にとって無くてはならない物質ですが、作られすぎや、役目が終わっても消えてくれない場合には細胞成分(蛋白質や遺伝子)を攻撃します。そのダメージが、さまざまな病気や老化へとつながっていくわけです。人間が生きて酸素を呼吸する以上、この活性酸素の発生は避けて通れない運命でもあるのです。
既存の薬に隠された新しい効能を探る
はじめに紹介した降圧剤に関して、研究・分析をした結果、活性酸素の働きを消す働きがあることが判明しました。体内で不要になった活性酸素にアタックして消滅させることで、悪い流れを断ち切っていたのです。
このように、本来、ある1つの目的で開発された薬剤であっても、その臨床の現場からの報告や学会での発表などにより、新しい有用な作用が発見されることが少なくありません。今後も、多くの薬に、当初の効能だけではない、二次的な作用があることが発見されることでしょう。
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