講義No.01087 医学 薬学

「決定的瞬間」的感覚が活性酸素分析の極意

「決定的瞬間」的感覚が活性酸素分析の極意

いろいろな種類の活性酸素

活性酸素をインターネットで検索すると、だいたいは「病気を起こす」「肌トラブルの元凶」のように、活性酸素=悪玉という図式が出来上がっています。しかし活性酸素を少し勉強すると、これはあまりにも単純な話であることは判ってもらえると思います。例えば病原体から体を守ったり、傷の治りを早くしたり、と、ここでは書ききれないほどのさまざまな場面で私たちの体は活性酸素を上手に利用して健康な生活を送っているのです。
しかし、このような活性酸素ですが、時には頑張りすぎて(=たくさん作られすぎて)、あるいは役目が終わったのになかなか消えてくれなくて(=お呼びでない)、体に迷惑をかけることがあります。この、不必要な活性酸素などによる体への障害を「酸化ストレス」と呼び、酸化ストレスが高まれば、免疫力や自己回復力が低下し、病気にかかりやすくなったりします。
活性酸素の寿命はとても短く、十億分の一秒から数秒という、はかない命。さらに、温度や光、まわりの微妙な環境にも大いに影響を受けるということもわかっています。

決定的瞬間、という観察イメージ

そんな超短命の活性酸素ですから、旧来の活性酸素の分析法の多くは、活性酸素そのものの動きを見るのではなく、活性酸素が暴れた結果の傷ついた体の成分を見ているだけでした。しかし傷ついた体の成分は活性酸素だけでなくほかの原因でも発生するために、活性酸素で痛んだのか確定できません。また、「さぁ、実験しますよ」と、試薬などを用いて活性酸素を観察しようとしても、準備しているうちに活性酸素が消えてしまうこともありえます。
そこで、活性酸素が今まさに働いている瞬間を観察する、活性酸素の新しい分析ツールが開発されました。このツールの開発は、活性酸素の新しい側面を私たちに示してくれる可能性を秘めています。
私たちの体の中でどんな物質が、どういう状態で活性酸素と接触しているのか。今、活性酸素をしっかりと見極める確かな分析技術が求められています。

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徳島大学 薬学部  教授 土屋 浩一郎 先生

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